──この日が初対面の男5人。共通点はD級グラビアアイドル如月ミキのファン。だが彼女は1年前に自殺した。礼節を重んじるオダ・ユージが一周忌追悼会を提案。会場準備はファンサイト管理人で“如月ミキ愛好家”を自負する家元。そして、ノリが軽い雑貨屋店員スネーク。いちご娘を名乗る無職の中年オヤジ。遠方から駆け付けた気の優しい安男。ところが「ミキは殺された」と言い出すオダ・ユージに一同驚愕。しかも、この中に犯人がいる…
本作は2004年に初上演された舞台『キサラギ』の映画版。密室劇の傑作として覚えている人も多いだろう。心地良い速度で“犯人探し”するのはキャラ立ち抜群の“アイドルおたく”。彼らは純粋が故に感情の浮き沈みが激しい。演技派俳優が揃いも揃って心くすぐる台詞を連発。ドンピシャ世代は“オダ・ユージいじり”が愛おしく感じられる。2007年の作品でZ世代に通用しないネタもあるだろうが、波のように押し寄せるユーモアと不思議な爽快感を味わってもらいたい。
出演者
家元/小栗 旬 :『キツツキと雨』『罪の声』他
オダ・ユージ/ユースケ・サンタマリア :『踊る大捜査線』シリーズ『ぼくが生きてる、ふたつの世界』他
スネーク/小出 恵介 :『ROOKIES -卒業-』『愚行録』他
安男/塚地 武雅 :『嘘八百』シリーズ『梅切らぬバカ』他
いちご娘/香川 照之 :『ゆれる』『宮松と山下』他
スタッフ
[監督]佐藤 祐市 :『シティーハンター』『六人の嘘つきな大学生』他
[脚本]古沢 良太 :『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ『コンフィデンスマンJP』シリーズ他
[音楽]佐藤 直紀 :『ツナグ』『ゴジラ-1.0』他
ここから先は、映画『キサラギ』結末ネタバレありのストーリーを綴ります。(本編1時間48分)
また、下記の時間表は、あくまでも目安です。
1 映画『キサラギ』0h00m~0h32m
2007年2月4日。永遠の清純派グラビアアイドル如月ミキ一周忌追悼会が始まろうとしていた。
参加者は、【ミキちゃんを応援する掲示板】で知り合ったファンたち。
一番乗りしてパーティーっぽく飾り付けする、ハンドルネーム(以下HN)家元(小栗旬)。
職業:しがない公務員。今日は堅苦しさ抜きで、ミキの思い出を語りたいと思っている。
2人目は、ラフな服(本人曰くトレンディ)で上京したHN安男(塚地武雅)。趣味:お菓子作り。
到着早々、コンビニに土産を忘れた事に気づきUターン中。似た格好の家元(小栗旬)と相性◎
その後やって来た、HNスネーク(小出恵介)。
性格:長い物に簡単に巻かれるタイプ。ネット含め難しい事は苦手。言動はパリピ系でも喪服を着用。
次いで追悼会の発起人、HNオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)。
本家・織田裕二への憧れは意地でも認めないが、理路整然と話す大人で喪服姿。
至極正論の彼らに、家元(小栗旬)は着替えを選択する。(じつは喪服持参してた)──
現在、部屋にいるのはオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)とスネーク(小出恵介)。
加えて、大家のおじさん(香川照之)がそそくさと奥に入り、安男(塚地武雅)もコンビニから戻る。
すると、二度目ましての家元(小栗旬)が喪服で現れた。
「えーっ!そ、そんなー」と、片道6時間弱かけて上京した、健気な安男(塚地武雅)。
土産の手作りアップルパイで挽回できる!?今から家(福島県)まで、喪服を取りに戻ろうか…。
さすがに、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)も目をつぶった──
揃った4人だけで追悼会を始めようとすると、予想もしていなかった事実が発覚する。
カーテンの向こう側で4人をうかがっていた大家のおじさん(香川照之)が、まさかのHNいちご娘。
しかも、空気を読んで喪服に着替えている。
可愛い女子を想像していたスネーク(小出恵介)は、カチューシャ付けた中年オヤジにムカつく──
家元(小栗旬)が個性バラバラのファンをまとめて、始まった自己紹介。
「やすおです 本名です」と、真面目な安男(塚地武雅)は、まだ動揺が止まらない。
HNが照れ臭いと言って、場を和ませるオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)。
対して「僕は気に入ってる」や「無職です」と、場をピリつかせるいちご娘(香川照之)。
家元(小栗旬)は気まずい空気を変えるため、自慢の如月ミキレアグッズの公開した。
だが、安男(塚地武雅)だけは、アップルパイを頬張りムカッとしている。
そして、立ち上がったかと思えば、「買ってきます! 喪服があれば、盛り上がれるんです!」
洋服の青山に走り出した変わり者に、呆れるオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)。
腐っているアップルパイに蓋をして、残った4人で如月ミキの軌跡を辿り始める──
週1ペース、合計200通ものファンレターを送り続けたほど如月ミキを応援していた家元(小栗旬)。
一般には出回らない母校の学校新聞まで入手して、大事にファイリングしていた。
ヘアスプレーと殺虫剤を間違えた、ミキらしい天然エピソードに微笑む一同。
「やりそう!」とか「事務所 通していない仕事か」って、いろいろ思いを巡らす。
そんな一同が唸ったレア物は、漢字が少なく誤字脱字だらけの、正真正銘如月ミキ直筆の手紙。
“家元さんのお手紙にいつもはげまされて……お仕事ガンバロー!っと思るんです。ミキの命より大事な宝物です。…”
一ファンへのアイドルらしい返事でも、嬉しい家元(小栗旬)。
何より、直筆の手紙を貰った事がない者たちから向けられる、羨望の眼差しに感無量だった──
如月ミキのプライベート生写真を自慢するスネーク(小出恵介)。
「ミキちゃんのカチューシャ」って、嘘を吐くいちご娘(香川照之)。
笑顔が絶えない家元(小栗旬)たちが始めたのは、カメラ撮影NGだったイベントの話題だ。
写真の隅にデブッチャーを発見したいちご娘(香川照之)が怒り、スネーク(小出恵介)も同感する。
如月ミキ担当の男性マネージャー デブッチャー(デブで茶髪)は厳格で、ルールを破るファンに手荒い。
「まあ、彼も仕事でしょうから」と、フォローする大人のオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)。
それを聞き流して如月ミキを語り合う3人に、あの噂が実現した場合の気持ちを尋ねてみる。
「見てみたかったですか?ヘアヌード写真集ですよ…」
スネーク(小出恵介)、いちご娘(香川照之)ともに絶対反対!
家元(小栗旬)も「ミキちゃんの最大の魅力は目です。パッチリ二重の目!」
歌も下手、運動も苦手だけど、笑顔で一生懸命だった如月ミキは1年前の今日、自殺した。
ところが「自殺じゃないとしたら?」
如月ミキの死の真相を追い続け、他殺の可能性に気づいたオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)。
驚く3人に語り出そうとした時、喪服姿の安男(塚地武雅)が洋服の青山から陽気に帰って来た。
数十分前とは違う神妙な面持ちの家元(小栗旬)にあしらわれても、空気が読めない。
「え?えーっ!?どーいうこと?」
そんな大声も静まると、報じられた当時の状況や如月ミキの人となりを見直すことに。
今も彼女の死を受け入れられない、いちご娘(香川照之)は耳を塞ぐ──
2 映画『キサラギ』0h33m~0h57m
如月ミキ(本名:山田美紀)は2006年2月4日夜、アパートの自室に油をまいて焼身自殺を図った。
直前には、所属事務所マネージャーの留守番電話に遺言を残している。
その内容は「やっぱりダメみたい 私もう疲れた 色々ありがとう じゃあね」
これらの状況から、仕事の悩みを抱えていた発作的な自殺だと結論付けた警察。
火の勢いは強くて上階まで延焼したが、奇跡的に他の死傷者を出さずに済んだ──
しかし、ずっと如月ミキを見てきたオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)が異を唱える。
「一歩間違えれば大惨事 せめて人様に迷惑を掛けないよう… それが如月ミキだと思いませんか?」
他殺説に激しく同意するスネーク(小出恵介)と、すぐには賛同できない家元(小栗旬)。
安男(塚地武雅)は、食べかけのアップルパイを頬張りながら状況を見守った。
そして、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)は、公には知られていないストーカーの存在を…
「おぇ!」
腹を壊してトイレに駆け込む安男(塚地武雅)はほっといて、如月ミキに起きたストーカー被害が語られる──
どうやらポツンと浮いてしまった安男。じつは、トイレに駆け込む惨事はもう一度来る。温厚な家元も「二度と戻ってくるな!」ってキレてしまうシーンは割愛しておこう。
如月ミキが住むアパート付近で目撃された男は、彼女の留守中に家にまで侵入。
目的は、身の回りのお世話!?掛け布団をキレイに直して食器まで洗った。
スネーク(小出恵介)は「お母さんみたい」と嫌悪感を持ち、いちご娘(香川照之)もギュッと耳を塞ぐ。
如月ミキが死んだ日の夜にも目撃された、その男が彼女を殺害した犯人だ…
ストーカーを野放しにした警察の捜査怠慢を嘆き、熱くなるオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)。
熱烈なファンも知らなかった情報のネタ元は、デブッチャー(如月ミキのマネージャー)だと明かす。
すると、デブッチャーが責任回避のために、架空のストーカー話をしたと反論する家元(小栗旬)。
これまで、如月ミキの所属事務所から、ストーカーの被害届や通報履歴は一切ない。
保管された資料をすべて読んで、消えた他殺の線。そう警察の正当性を主張する、彼の勤務先は…
警視庁総務部情報資料管理課だった。(父は警視総監)
しかし、食い下がるオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)は警察批判をやめない。
デブッチャーの通報を無視してストーカー対策を怠った警察は、如月ミキの死を自殺にすり替えたと。
「資料を読んで分かった気でいるが、本当は何ひとつ分かってない 事件は現場で起きてるんだ!」
すると、その熱に感化されたスネーク(小出恵介)まで警察を責める。
訳の分からない対立に、いちご娘(香川照之)は荷物をまとめるが…
おびき寄せたストーカーを、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)は逃がさない──
いちご娘(香川照之)が【掲示板】に投稿している“如月ミキの影響で○○始めた”。
1.寝る前にアロマキャンドルを焚く
2.“キタキツネのラッキーチャッピー”キャラクターグッズ収集
それらは非公表で、如月ミキ愛好家の家元(小栗旬)すら初耳。完全なるプライベート情報だ。
オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)は、デブッチャーからこんな出来事も聞いた。
如月ミキは、愛用の“カチューシャ”を盗まれた…
「ミキちゃんの…って言いましたよね」
如月ミキの部屋に入ったストーカーだと、確定してしまったいちご娘(香川照之)。
逃走を図るも、殺しに掛かるオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)。
突然の修羅場にスネーク(小出恵介)は後ずさり、警察官の家元(小栗旬)が必死に止めた──
いちご娘(香川照之)の言い分。
1.路上から如月ミキのアパートを見上げる行為は、健全な”見守り”
2.ミキの留守中に住居侵入した理由は、開けっ放しの窓を閉めようしただけ
「だってそうだろ? 万が一、変なストーカーが侵入したらどうするんだ!」
3.ミキの散らかった部屋を見たら、衝動が抑えきれず“お母さん”を…。カチューシャは記念だ。
誇らし気に自供するいちご娘(香川照之)を、スネーク(小出恵介)たちは羨んでしまう──
如月ミキが死んだ2月4日の夜も、アパート前で目撃されたいちご娘(香川照之)。
だが、ミキの死亡時刻となる夜11時頃は、無銭飲食で留置所にいたと告白する。
裏付けを取るために、足立署に電話した家元(小栗旬)。本当に捕まっていた。
読みが外れ、うな垂れるオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)。
すると、疑いが晴れたいちご娘(香川照之)が、あの夜の見守りで目撃した“モヒカン頭の男”の話を始める──
アパートにモヒカンがやって来ると、喜んで抱きついた如月ミキは部屋に入れた。
彼氏くらい…そう思ったいちご娘(香川照之)は、所持金がないのにヤケ酒して留置所へ。
家元(小栗旬)はツラい現実に下を向き、スネーク(小出恵介)もギョッとする──
モヒカンが、別れ話のもつれでミキを殺した!
そんな妄想を膨らませていると、モヒカンに繋がる手掛かりを思い出す家元(小栗旬)。
「あっー!生写真 スネークさん、これどこで手に入れたんです?」
ミキの後ろにぼんやり写る、モヒカンに注目した3人。そして、気づいてしまった。
「お前がミキちゃんの彼氏?」
当時は、モヒカン頭だったスネーク(小出恵介)の「うん」って答えに、いちご娘(香川照之)は半狂乱。
ムカつくけど理性を保つ家元(小栗旬)が、殺気立つオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)を止める──
3 映画『キサラギ』0h58m~1h18m
物凄く怒っている3人に詰められるスネーク(小出恵介)は、必死に真実を話す。
1.彼氏ってのは嘘。本当は雑貨屋の店員と常連客で友達止まり
2.いちご娘(香川照之)が目撃したのは、入荷したラッキーチャッピー“ボトルセット”の配達場面
3.喜んだミキは、ラッキーチャッピーを抱きしめた
4.部屋に入った理由は「(詰め替えを)手伝おうか?」って聞いたらミキがOKしてくれたから
5.ハンドソープ、台所洗剤からサラダ油まで計6本、全部詰め替えた
「へー、そーなんだー」と、嫉妬する家元(小栗旬)。
誇らし気なスネーク(小出恵介)は、ゴキブリ退治して「素敵!」って褒められた事も話す。
そして、ミキの死亡時刻となる夜11時頃は、雑貨屋の店長と一緒に地震で商品が散乱した店内の片づけ。
確かに地震はあったため、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)も追及をやめる──
同じファンだと思っていた2人に出し抜かれて、頭がおかしくなりそうな家元(小栗旬)。
ミキに告白して振られたスネーク(小出恵介)を笑って、どうにか理性を保つ。
だが、ミキには手作りのハート型のクッキーを渡す“大切な人”がいた事実も判明してまた失恋。
幸せそうに「誕生日に渡すんだ」と言ったミキを、しみじみと思い出すスネーク(小出恵介)。
すると、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)も、懐かしむように話し出す。
「…ヤックン。 幼馴染で初恋の相手 結婚の約束も…」
ミキの純愛に家元(小栗旬)もしみじみするが、スネーク(小出恵介)には通用しなかった。
「オダ・ユージ あんた何者なんだよ?」
その腕を、しつこく掴むいちご娘(香川照之)。
すると、「放しなさーい!」って、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)が豪快に突き飛ばす。
3人は、激ヤセして黒髪の彼が、如月ミキのマネージャーデブッチャーだと気づいた。
ミキを殺した犯人探しに心血を注いだ、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)の体重は55kg減。
やっと辿り着いた真犯人いちご娘(香川照之)も、見当違いで悔しがる。
だが、もっと悔しい思いをして、すっかりイジけてしまったのは家元(小栗旬)。
「僕よりミキちゃんに近い人物が、どんどん現れる」
住居侵入して“お母さん”したいちご娘(香川照之)さえも、凄い人に思えてしまう──
消え入りそうな家元(小栗旬)が唯一すがれるのは、同じ“一ファン”でしかない安男(塚地武雅)。
だが、トイレから戻って「ヤックン…」のあたりからドアの向こうで話を聞いていた彼が、毅然と話し出す。
如月ミキを“ミキっぺ”と呼ぶこの男の本名は安男。2人は、同じ福島県出身。
「良く一緒に、お菓子作ったっけ…ヤックンです」
「嘘だ、やめてよー!」全員がそう言って信じられないが、一番ショックを受けたのは家元(小栗旬)だ──
如月ミキは自殺だった。彼女を一番知っている安男(塚地武雅)がそう言った。
だが、その原因を作った人物は、マネージャーだったオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)だと。
周りの人たちに迷惑を掛けたくない。幼い頃に生き別れた父親に成長した姿を見て欲しい。
その気持ちだけで、どんなに追い込まれても頑張ったミキだが、安男(塚地武雅)に弱音を吐いた日もあった。
オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)も、ただ厳しかった訳ではない。
ヘアヌード写真集の決断も“D級アイドルで終わって欲しくない”という、熱い思いがあったからこそ。
だが、ミキがいない今となっては、後悔だけが残る──
「無理矢理にでも、福島に連れ戻せば…ごめんなミキっぺ」
「…僕なんか、ファンレター200通も出して 彼女の気持ちも知らないで“頑張ってください”って」
自分もミキを追い込んでしまった1人…そう思いたい、家元(小栗旬)。
だが、“家元”の名前などミキからは一言も出たことはなく、他の4人との格差は縮まらない──
ミキが自殺を図る30分ほど前、彼女と電話していた安男(塚地武雅)。
内容を聞きたがるいちご娘(香川照之)たちに「ミキっぺの部屋にゴキブリが…」と、その時の状況を話す。
殺虫剤が空っぽだと言うミキに、台所洗剤を使ってゴキブリ退治するようアドバイスした安男(塚地武雅)。
その直後、キャッチホン(割り込み通話)が入ったミキは、折り返す約束をして電話を切った。
すると、“割り込み”は自分だとオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)が白状する。
そして、ミキは自殺。
安男(塚地武雅)に、折り返し電話は来なかった──
「火事でゴキブリも死んだろう」と、頑張ったミキを偲ぶいちご娘(香川照之)。
だが、違和感を覚える家元(小栗旬)は、ミキが自殺を図るまでの行動を見直す──
夜10時35分、頑張ってゴキブリ退治するミキに、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)から電話が入る。
翌日のスケジュール確認をして通話を終えた。
夜10時55分、次はミキがオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)に電話を掛け、留守電にメッセージを残す。
「やっぱりダメみたい 私もう疲れた 色々ありがとう じゃあね」
ミキの心境の変化は当然だと言う、スネーク(小出恵介)といちご娘(香川照之)。
鬼みたいなオダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)から電話が来て、嫌な現実に引き戻されたのだから──
4 映画『キサラギ』1h19m~1h48m
安男(塚地武雅)への“折り返し”を約束したにもかかわらず、電話しなかったミキ。
一方で、鬼マネージャーには電話して、遺言を残した事が腑に落ちない家元(小栗旬)。
すると、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)も、自身が感じた普段とは違うミキの不自然さを話す。
いつもは鬼マネージャーに対して敬語だったミキだが、最後の言葉づかいはフランク過ぎた──
疑問点と熟知するミキの人となりを考慮して、推理する家元(小栗旬)。
そして、“着信履歴のリダイヤルで間違い電話しただけ”という、ミキらしい答えに辿り着く。
「やっぱりダメみたい 私もう疲れた 色々ありがとう じゃあね」
これを、ミキが安男(塚地武雅)に対して言ったものだとしたら?
家元(小栗旬)は、安男(塚地武雅)とミキが話していた“ゴキブリ”の下りに戻って説明する。
1.ミキは安男(塚地武雅)のアドバイス通り、台所洗剤を使って20分くらい逃げるゴキブリを追い続けた
2.残念ながらゴキブリ退治は失敗。疲れ切ったミキは安男(塚地武雅)にお礼のメッセージを言ったつもり
3.ゴキブリ退治で部屋に台所洗剤をまき散らしたミキ。だが、実際はサラダ油だった
4.キタキツネのラッキーチャッピー“透明ボトル”に、詰め替えられていた台所洗剤とサラダ油
5.見分け方は中身の色、もしくは僅かに違うキャップだけ。ミキが取り違えたのも、納得できる
すると、“詰め替え”したスネーク(小出恵介)は、「俺のせい?」ってオドオド──
次に検証するのは、火はどうやってついたのか?
1.ゴキブリ退治で疲れ切ったミキは寝ようとして、アロマキャンドルに火をつけた
2.地震が起きた拍子にキャンドルが倒れて、サラダ油をまき散らした部屋に燃え広がった
以上により、如月ミキは不運な事故死だったという真相に辿り着く。
アドバイスと詰め替えをした責任を感じる、安男(塚地武雅)とスネーク(小出恵介)。
だが、誰よりも後悔していたのは、ミキの生き別れた父親であるいちご娘(香川照之)だった。
「ストーカーじゃなく 本当に見守ってたってことか…」
発覚した衝撃の事実に、言いようのない孤独を感じる家元(小栗旬)は、4人から離れて泣き出す──
まだ自殺説を捨て切れない、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)が、ある疑問を口にした。
ミキの死体が発見されたのは納戸。
そこに窓は無く、さすがのミキも逃げられないのは分かっていたはずだ。
「やっぱり、自殺なのかな…」
すると、たくさんの手紙が入った段ボールが、納戸にあった事をいちごパパ(香川照之)は思い出す。
ミキにとって“命より大事な宝物”は、家元(小栗旬)から貰ったファンレター。
そして、ミキがハート型のクッキーを渡したい“大切な人”も、明日が誕生日の家元(小栗旬)だった。
真実を知った家元(小栗旬)に、熱い思いがこみ上げる──
16年ぶりに、ミキの母から連絡があった事を打ち明けるいちごパパ(香川照之)。
それは、前向きに仕事を頑張っている、あの子を見て欲しい…
家族、幼馴染、友達、マネージャー。
そしてファンに支えられ、彼らの気持ちに応えた正真正銘のアイドル如月ミキ。
改めて、その魅力に惹かれる5人は、家元(小栗旬)がイベントで隠し撮りしたミキを見る事に。
音痴なミキが歌う『ラブレターはそのままで』に合わせたオタ芸を、全力で楽しんだ──
2008年2月4日。永遠の清純派グラビアアイドル如月ミキ三回忌。
集まったのは家元(小栗旬)、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)。
そして、スネーク(小出恵介)、いちごパパ(香川照之)、安男(塚地武雅)。
この5人に、アイドルイベントでお馴染みの司会者(宍戸錠)が1本の針金を見せる。
「…如月ミキは殺されたんだよ! 2月4日、何があったのか知ってるか?」──
いかにも続編を匂わせる最後だが、実際には製作されることはなかった。脚本を書いた古沢良太曰く、その出来は“一周忌よりもつまらない”という事らしい。まあ、ある意味では潔くて私は好きだ。続編で撃沈する映画は多い…。ずっと謎めいていた如月ミキは『ラブレターはそのままで』の熱唱シーンでガッツリ顔出しする。もちろん否定的な感想もあるが、5人と一緒に楽しんで欲しい…私はそう思う。