コメディ

名作との遭遇⁉賛否を呼んだ感情ごちゃ混ぜ系SF風刺コメディ韓国映画『地球を守れ!』R-18❘主演シン・ハギュン


原題『지구를 지켜라!』2003年製作

──[宇宙人への道 愛と平和のメッセージ]を愛読する母親思いの青年ビョングと、彼に一途な恋心を抱くサーカス団の“踊る綱渡りの女王”スニは、地球を滅ぼそうとするアンドロメダ星からの侵略者を割と簡単に捕まえた。その外見は有名なカン・マンシク社長で、スニは妄想に付き合ってるだけ⁉しかし、ビョングには殺したいほど憎い相手だった。地球と大切な人を守りたいビョングに追い詰められたマンシクは…。

2003年に『地球を守れ!』で長編デビューしたチャン・ジュナン監督。青龍映画賞(いわゆる韓国のアカデミー賞)では最優秀新人監督賞を受賞し国内外で高く評価された。同年、日本開催の映画祭【東京フィルメックス・コンペティション部門】でも本作は上映され、アジアの新鋭監督の一人として注目される。だが、この“怪作”は日本を席巻中だった韓流ブームに乗らずDVDスルー。コアな映画ファンの心にだけ残る作品に…。あれから20年の時が経ち、まさかのニュースが報じられた。「鬼才ヨルゴス・ランティモス監督が韓国映画『地球を守れ!』のリメイク版を…」アメリカの公開は2025年11月7日予定だが、日本はいつ?続報が待たれる。

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ゆきお

圧倒的な表現力と存在感を持つ演劇出身の俳優シン・ハギュン。作品ごとに異なる印象をあたえる彼が、この『地球を守れ!』で演じるビョングは一見平凡な青年だ。しかし、人間社会に紛れ込む“エイリアン”を捕まえて始まったのは非道な拷問。そうしなければ地球が破壊されると大真面目に信じている。そして、後半にはビョングの心を駆り立てた理由が見えてきて…。悪ふざけのように始まったはずが、じつは社会派映画かも⁉そんな錯覚すら覚えるSF風刺コメディはシン・ハギュンの“純真”と“狂気”だけでなく、身体を張った大御所俳優ペク・ユンシクも見応え必至。一応R-18だけあって、身の毛もよだつ描写があるから注意も必要だ。

ここから先は、映画『地球を守れ!』結末ネタバレありのストーリーを綴ります。(本編1時間57分)

また、下記の時間表は、あくまでも目安です。

人里離れた山奥で暮らすビョング(シン・ハギュン)の仕事は、マネキン人形作りと養蜂。
だが、それより熱心なのは地球に紛れ込んだエイリアンの研究だった。

そして、大真面目に取り組んでる彼自身も“俺は変なのか?”と疑ってしまう事実に行き着く。
世間一般に知られる、ユジェ化学工場の社長カン・マンシク(ペク・ユンシク)。

奴の正体は、アンドロメダ星の王子と唯一交信ができる最重要エイリアンだ。

警視庁長官の娘婿という立場も濫用するズルい奴で、妻以外のエイリアンと密会も増えた。
7日後の皆既月食、いよいよ奴らの王子が地球に来てしまう。

「放っておいたら… 生き残るにはマンシクを捕まえるしかない 俺たちが地球を守るんだ」
すべてを聞かされたガールフレンドのスニ(ファン・ジョンミン)は、とっても怖くて泣いた──

人がいない地下駐で、呼び止められるマンシク(ペク・ユンシク)。
振り返ってみると、変なヘルメットを被る男に「出身はアンドロメダ星では?」って聞かれた。

最後には変なヘルメットを被る女に捕まり、車ごと人里離れた山奥に連れ去られてしまう。

アンドロメダ人は人間と遺伝子構造が似てて、力を弱体化させる効果的なアイテムは液体湿布だ。
「弱点は3か所 目と足の甲… 」と、スニ(ファン・ジョンミン)もソレをどこに塗るか真剣に学ぶ。

ハタと気づくビョング(シン・ハギュン)は目をそらし、残りの急所をはぐらかした。
効率よく浸透させるため、擦りむけるまで足の甲の皮膚をこすられるマンシク(ペク・ユンシク)。

パンツ一丁で椅子に縛り付けられ、アンテナ代わりの髪も丸刈り。
まさか液体湿布で悶絶してるなど世間は思わないが、この拉致事件はすぐニュースになる──

一匹狼のチュ刑事(イ・ジェヨン)は事件に興味を持つが、今は左遷状態。

部下たちを従える課長(キ・ジュボン)に「出しゃばるな」と、現場から締め出されてしまう。
だが、新米刑事ソンヒョク(イ・ジュヒョン)には、過去に大手柄を立てた“一匹狼”こそ憧れの刑事。

唯一慕ってくれる“新米”に、チュ刑事(イ・ジェヨン)は現場で拾ったうつ病の薬を見せる。
それは、マンシク(ペク・ユンシク)と格闘した時にビョング(シン・ハギュン)が落としたもの。

現実の彼は虐げられる側で、地球を守る強いヒーローではなかった──

アンドロメダ星? 王子と交信できるロイヤル遺伝子コード?
意味がさっぱり分からず早く帰りたいマンシク(ペク・ユンシク)は、お金をチラつかせる。

だが「金目当てだと?ふざけるなエイリアン野郎!」ってビョング(シン・ハギュン)は激怒。
今にも泣きそうなスニ(ファン・ジョンミン)も、彼のために電圧を上昇させる──

後日、感電に絶叫したマンシク(ペク・ユンシク)の口座から、お金を引き出す不審者が現れた。

「たった400万ウォンのために社長を拉致したのか?」「カードで少しずつ“せびり取る”のでは?」
顔を隠すがナンバープレートは丸見え、粗雑な不審者を追ってみる課長(キ・ジュボン)と部下たち。

同じく事件の早期解決に自信を持つ新米刑事ソンヒョク(イ・ジュヒョン)は、一匹狼が仕事する厨房へ。

だが、「俺の捜してる犯人は(400万ウォン欲しさに防犯カメラの前に現れる)そんなマヌケじゃない」
的外れな新米を怒るチュ刑事(イ・ジェヨン)は、同じ臭いがする三人の行方不明者を教えてやる。

彼だけは、マンシク(ペク・ユンシク)も拉致したこの“同一犯”を閉鎖的な人物だと見抜いてた──

感電死せず奇跡的に助かったマンシク(ペク・ユンシク)は、工場で起きたトラブルを思い出す。
「母親のことを根に持って? …それとも恋人のことか?俺が殺したんじゃない!」

今も悲しみを引きずるビョング(シン・ハギュン)は幻覚に怯え、反動でエスカレートする拷問。
そして、自分は愛されてないと痛感したスニ(ファン・ジョンミン)は、泣きながら去った──

厨房仕事のかたわら捜査を続けたチュ刑事(イ・ジェヨン)が、手掛かりを元に人里離れた山奥へ。

5年前から原因不明の昏睡状態にある、ユジェ化学の女工員(イェ・スジョン)。
未払いだった入院費377万ウォンを、彼女の息子ビョング(シン・ハギュン)が先日まとめて払ったのだ──

別件捜査のフリをして宿泊を願い出ると「もちろん大歓迎です」って意外にも協力的。
だが、内心は焦りっぱなしでチュ刑事(イ・ジェヨン)の動向を用心深く見てた。

冷や冷やの連続だったが、隠し部屋のマンシク(ペク・ユンシク)を発見されず迎えた朝。

帰り際、ビョング(シン・ハギュン)は“宇宙人への道 愛と平和のメッセージ”って本を渡す。
エイリアン研究のために山奥に居ると、昨夜も熱心だった事を面白がるチュ刑事(イ・ジェヨン)。

だが、“地球”(ビョングの飼い犬)のくわえた人骨を見て緊張が走る。
急いで新米に電話するが、その背後にはビョング(シン・ハギュン)。

チュ刑事(イ・ジェヨン)は、何も伝えきれぬまま群がる蜂に殺された──

いい夢から目覚めたマンシク(ペク・ユンシク)は、手に釘が打ち付けられてる現実に絶叫。
足は守ろうと「俺はエイリアンだ!」と叫ぶが、そんなのビョング(シン・ハギュン)は分かり切ってる。

そして、斧を振り下ろされたくない一心で、とうとう極秘で行った遺伝子組み換え実験を白状した。
5年かかる前例のない実験の結果は、母親(イェ・スジョン)が間もなく目覚めるか死ぬだけ。

死なせない方法は実験中止だけで、マンシク(ペク・ユンシク)は大勢いるうちの一人を諦めた。
「車のトランクに“ベンジン”と書かれた解毒剤がある それを飲ませろ」

生き甲斐である母親(イェ・スジョン)を失いたくないビョング(シン・ハギュン)は必死に走った──

一匹狼のチュ刑事(イ・ジェヨン)と連絡が途絶えた、新米刑事ソンヒョク(イ・ジュヒョン)。

その後、衝突する課長(キ・ジュボン)に厨房行きを命じられ、迷いながらも単独捜査を開始。
すると、一匹狼に貰ったマンシク(ペク・ユンシク)の記事全部に写り込む男に気づく。

教師殺人未遂で逮捕歴のあるビョング(シン・ハギュン)だ。

同じ頃、怨念を書き殴った彼のノート、猟奇的な写真や現物を見たマンシク(ペク・ユンシク)は、罪の重さにのたうち回る。

父親が悲惨な死を遂げた幼少期、高校時代には教師に虐げられ、服役中も工場でも暴虐の限りを尽くされ…
そして、自らの手で母親(イェ・スジョン)を死なせてしまったビョング(シン・ハギュン)は立ち尽くす──

別の場所では課長(キ・ジュボン)の部下が、ナンバープレートから特定した青年を逮捕。
容疑を認めず暴れるが、最近ユジェ化学工場をクビになり血痕がついた証拠品も所持してる──

のけ者扱いされる新米刑事ソンヒョク(イ・ジュヒョン)は、真犯人を追って人里離れた山奥へ。

遂にマンシク(ペク・ユンシク)を発見すると、失意のビョング(シン・ハギュン)も目の前に。
「あいつが お袋を殺した」と訴えかけられ「ビョングさん 何もかも知ってる でも、もう終わった…」

そう説得を試みるが、危機を感じて駆け付けたガールフレンドのスニ(ファン・ジョンミン)に捕まり縛られる──

苦しむ者を救わず、正義を振りかざすだけの刑事も敵に見えるビョング(シン・ハギュン)は銃を。
すると、もう我慢できないマンシク(ペク・ユンシク)が叫んだ。

「敵を全員殺せば地球が守れるのか? お前が殺したアンドロメダ人は二人だけだった 他は復讐だろ…」

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ゆきお

感情むき出しのマンシクビョングは唖然⁉気が収まらないマンシクはこんな事を語り出す

「…あと4時間だ 月食が終れば地球は滅亡」と、本気のマンシク(ペク・ユンシク)。
大真面目にエイリアンの研究をしてきたビョング(シン・ハギュン)は、恐怖に慄く。

すると、真剣な眼差しのスニ(ファン・ジョンミン)が「他に誰もいない ビョングが地球を守るのよ」と。

背中を押されたビョング(シン・ハギュン)は、液体湿布を握りしめて勇ましい顔
「俺が失敗したら…」って、エイリアン情報と地球を新米刑事ソンヒョク(イ・ジュヒョン)に託す。

湿布で口を塞がれて何も言えない新米を残し、王子と交信するため三人は下山。
だが、鬼気迫る表情の彼らを放っておけず、ソンヒョク(イ・ジュヒョン)と地球もあとを追った──

アンドロメダ星の王子と交信できる工場に到着。あと1時間ちょっとで皆既月食。
すると、準備に取り掛かるマンシク(ペク・ユンシク)の様子が怪しい。

そして、動き出した巨大なアームに締め付けられたスニ(ファン・ジョンミン)は絶命してしまう。
マンシク(ペク・ユンシク)に逆襲され、致命傷を負っても抗い続けるビョング(シン・ハギュン)。

最後はソンヒョク(イ・ジュヒョン)に撃たれてしまい、地球を守れなかった──

丸刈りになって見違えたが、確かにユジェ化学工場の社長カン・マンシク(ペク・ユンシク)だ。
もう死んだと思ってた警視庁長官の娘婿を救出できて、ご機嫌な課長(キ・ジュボン)と部下たち。

だが、上空にアンドロメダ星のエイリアンが襲来し、光線砲でソンヒョク(イ・ジュヒョン)も瞬殺される。

宇宙船に、吸い込まれて行くマンシク(ペク・ユンシク)。
その正体は「殺されるとこだった こんな頭じゃ交信なんて」と、側近をなじるアンドロメダ星の王子──

「王子 これから地球をどうしますか?」
「実験を中止しろ あの星に希望はない…」

眩しい光りを見上げる人類。そして、地球は跡形もなく吹っ飛んだ──

<span class="fz-12px">ツトム</span>
ツトム

アンドロメダ星の王子に敗れて「誰が地球を守るんだろう」と最後まで心配するビョング。エンドロールでは、大切な人に囲まれた彼の無垢な笑顔が流れます。それを含めてこそ怪作『地球を守れ!』が結実すると私は思うので機会があれば観て欲しいですね。