原題『쉬리』1999年製作
──北朝鮮第8特殊部隊。実践を想定した生死を分かつ極限状態の訓練に慈悲はない。1992年、屈指の狙撃手である女工作員バンヒが韓国に潜伏。要人殺害、ガス爆発テロを遂げた。しばらく鳴りを潜めたかにみえた1998年、第8特殊部隊長ムヨンが国防科学研究所から液体爆弾CTXを強奪。後手に回る捜査は韓国秘密情報部内の情報漏洩が疑われ、公私ともに相棒であるジュンウォンとジャンギルも疑心暗鬼に。 そんな中、1つ目のCTXが爆発した。
北朝鮮第8特殊部隊工作員と韓国秘密情報部員。自らに課せられた使命を全うする者たちが、ソウル市内で交戦する映画『シュリ』。第8特殊部隊を率いるムヨン役に名優チェ・ミンシク。相対する秘密情報部員ジュンウォンをハン・ソッキュが演じている。臨場感あるアクションも見どころだが、それ以上にジュンウォンと恋人ミョンヒョンの葛藤と決断。そして、ムヨンの確固たる信念が見えた時、分断国家の痛みが胸に突き刺さる。
出演者 ユ・ジュンウォン/ハン・ソッキュ :『八月のクリスマス』『世宗大王 星を追う者たち』他 イ・ミョンヒョン/キム・ユンジン :『ハーモニー 心をつなぐ歌』『告白、あるいは完璧な弁護』他 パク・ムヨン/チェ・ミンシク :『オールド・ボーイ』『不思議の国の数学者』他 イ・ジャンギル/ソン・ガンホ :『JSA』『ベイビー・ブローカー』他 スタッフ [監督・脚本]カン・ジェギュ :『ブラザーフッド』『ボストン1947』他 [音楽]イ・ドンジュン :『戦火の中へ』『7番房の奇跡』他
ここから先は、映画『シュリ』結末ネタバレありのストーリーを綴ります。(本編2時間4分)
また、下記の時間表は、あくまでも目安です。
1 映画『シュリ』0h00m~0h39m
韓国秘密情報部員のジュンウォン(ハン・ソッキュ)は悪夢を見た。
祖国・北朝鮮に忠誠を誓った女工作員イ・バンヒに殺される…。
必死の捜査も虚しく、韓国で暗躍するバンヒを逮捕できぬまま時だけが流れた──
1998年、もうすぐ結婚するジュンウォンとミョンヒョン(キム・ユンジン)。
出会いは1年前。熱帯魚店を営む彼女と客だった彼は自然に惹かれ合った。
「1匹が死んだら、もう片方も後を追うの… あなたがいないと、私も…」
そう言って大切なキッシンググラミー(熱帯魚)に微笑みかける彼女は、彼が秘密情報部員である事を知らない──
この日、ジュンウォンは相棒のジャンギル(ソン・ガンホ)とショッピングモールへ。そして、ある男の背後につく。
だが、手筈通りジャンギルと接触するはずの男が突然逃走。怯える男はジュンウォンの目の前で射殺されてしまう。
「あいつに見られた」と言い残した男の正体は、武器密売組織を取り仕切るイム・ボンジュ。
近々予定される取引は重大な危険を伴うと察して、秘密情報部員のジャンギルを頼った。
ボンジュの死体を見た監察医は名狙撃手の腕前に感心。一方、過去の苦い経験がジュンウォンの頭をよぎる。
これまで、女工作員バンヒのターゲットは要人。
なぜ今回は武器屋のボンジュ?恐怖に駆られた彼がジャンギルに話したかった内容は?
事務所を捜索しても手掛かりはなし。あるいはバンヒは関わっていないのか?
自分自身や相棒の命よりも仕事。バンヒを捕まえることが何より優先だと断言するジュンウォン。
結婚後も秘密情報部員のことは隠し通す気でいる相棒を、ミョンヒョンとも親しいジャンギルは心配する──
殺害された武器屋と国防科学研究所の接点を見つけたジャンギル。
だが、向かったそこでも研究員が犠牲になってしまう。
その後、明らかになったのは水面下で進んでいた新兵器“液体爆弾CTX”の完成。
まさに今、軍司令部の要請で移送中だった──
理不尽な足止めをする兵士に「お前の所属部隊はどこだ?」と、凄む若い韓国軍兵士。
それに対する返答は「朝鮮民主主義共和国」
北朝鮮第8特殊部隊長ムヨン(チェ・ミンシク)と精鋭兵の襲撃により、液体爆弾CTXは強奪される──
2 映画『シュリ』0h40m~1h04m
緊急の捜査会議を開く韓国秘密情報部。
犯行は女工作員バンヒら北の戦闘員だと推測するジュンウォン(ハン・ソッキュ)。
だが、2002年ワールドカップで南北合同チームを結成し和解ムードが見られる昨今。
北朝鮮軍から離脱者が相次いでいると指摘する声も上がった。
いずれにせよ、液体爆弾CTXは無色無臭。
容易に探知機をすり抜けてしまうとあって、局長(ユン・ジュサン)をはじめ誰もが最悪の事態を恐れる──
一連の出来事が不自然と感じるジャンギル(ソン・ガンホ)。
武器屋のボンジュらは、会おうとした寸前に殺害された。
液体爆弾CTXの移送にしても、限られた者しか知り得ない任務だ。
まさか、韓国秘密情報部内に内通者が?
だが、ジュンウォンは自分でも局長でもないと笑う──
コードネーム“シュリ1”北朝鮮第8特殊部隊長ムヨン(チェ・ミンシク)。
“シュリ0”バンヒに、次なる対象者“キッシンググラミー”の殺害を命じた──
ジュンウォンは専門部署のミン博士を訪ねて液体爆弾CTXの仕組みを学ぶ。
今にも爆発しそうな実験に、帯同した“水槽掃除係”の後輩ソンシク(パク・ヨンウ)は後ずさる。
その後、車載カメラを確認。鮮明に映し出された強奪犯を見て表情がこわばるジュンウォン。
数年前、飛行機テロを実行した北朝鮮第8特殊部隊。
指揮を執ったジュンウォンは、あと一歩のところでムヨンを取り逃がしていた。
次こそテロを未然に食い止めたい、韓国秘密情報部の面々。
目的を果たすべく、北の戦闘員たちも動き出している──
部内での情報漏洩を危惧するジュンウォンは、単独で外出。
警察の友人グァノに捜査協力を求めるが、ターゲットを追尾するバンヒがすでに向かいのビルに。
そして、不運にも動いたグァノが背を撃たれてしまう──
韓国秘密情報部に電話し、運よく生き残ったジュンウォンをせせら笑うムヨン。
更に、仕掛けた液体爆弾CTXが間もなく爆発すると告げる。
手始めに多くの人で賑わうゴールデンタワー。
現場では緊急捜索が始まるが、爆発を止められなかった。
焦燥感に駆られるジュンウォンは、ミョンヒョン(キム・ユンジン)をホテルの一室に閉じ込める。
「何が君を苦しめるんだ?」
そう問い詰める彼の目を見ようとはせず、断っていた酒を飲むミョンヒョン。
押し黙る2人。それでも変わるはずがない想いが胸の中にある2人は抱き合う──
3 映画『シュリ』1h05m~1h33m
ジュンウォン(ハン・ソッキュ)は、ジャンギル(ソン・ガンホ)にだけ電話である事を伝えた。
それは液体爆弾CTXに関わる工作員が、情報提供してくれるというものだ。
急いでジュンウォンに指定された文化センターに向かうジャンギル。
だが、待っていたのは“工作員”を装うジュンウォンと銃を構える特殊部隊だった──
韓国秘密情報部に“内通者”が紛れているなら、ここにバンヒが来ると言うジュンウォン。
そんな風に考える彼に、ジャンギルはずっと引っ掛かっていた疑問を投げかける。
バンヒが使用するのは5連発半自動猟銃。武器屋ボンジュ、警察のグァノの現場も発砲は2発のみ。
どちらにも宿敵ジュンウォンが居たはずだが無傷。それは何を意味するのか…。
その時、北朝鮮第8特殊部隊長ムヨン(チェ・ミンシク)と精鋭兵が現れた。
ジャンギルは、ここに来ることを口外していないにも拘らず──
激しい銃撃戦が勃発し、二手に分かれるジュンウォンとジャンギル。
突如現れたバンヒが死線に立つムヨンを救い、2人は姿を消す。
雑踏に紛れるバンヒを尾行するジュンウォン。
気づけば見慣れた町に辿り着き、消えていた熱帯魚店の明かりがつく。
静かに店内を進むと、そこには負傷している恋人ミョンヒョン(キム・ユンジン)。
彼女がバンヒだという真実を突き付けられたジュンウォンは崩れ落ちる──
その後、熱帯魚店に2人の人物がやって来た。
1人目が辺りを見回して静かに去ると、あとに現れたのはムヨン。
彼は外見だけでなく、中身まで変わってしまったバンヒに悲しみと怒りをぶつけた。
ジュンウォンを愛している彼女は死のうと引き金を。
だが、ムヨンはそれを許さず、苦しむ彼女に任務続行を告げる──
済州島在住のミョンヒョンという女性に成りすましていたバンヒ。
ジュンウォンと出会うよりも前に知り合った2人は、姉妹のように過ごしたが別れは突然だった。
連絡が途絶えた寂しさを、訪ねて来た“姉の友人”ジュンウォンに話すミョンヒョン。
彼女はバンヒの存在を知らないが、別れの時に「ごめんね」と泣いた姉の優しさは知っている──
韓国秘密情報部に爆破予告の電話が掛かって来た。タイムリミットは午後2時。
悪い空気が流れる部内で、後輩ソンシク(パク・ヨンウ)がジャンギルに愚痴をこぼす。
「水槽にビスケットを入れないで下さい 僕は水族館の職員じゃない! …死骸の処理は断ります」
よく見ればジュンウォンの金魚だけ死んでおり、腹を切ると中には盗聴器が埋め込まれていた──
数日前、疑念から熱帯魚店に盗聴器を仕掛けたジャンギル。
その音声を聞き愕然とする彼は、ミョンヒョンの口から本心を聞こうと会いに行く。
「友人を裏切った君が許せない あいつは、心から君を愛してた 君は?」
だが、その答えを聞けぬままムヨンの銃弾に倒れた。
駆け付けたジュンウォンに、“相棒”なのに疑った事を詫びるジャンギル。
動かなくなったその手には、午後2時に開催される南北サッカー交流試合の観戦チケットが握られていた──
4 映画『シュリ』1h34m~2h04m
韓国、北朝鮮、両国の首脳が揃って観戦するサッカー交流試合。
手を取り合う韓国大統領と北朝鮮主席に、大歓声が上がる満員のスタジアム。
ここに液体爆弾CTXが仕掛けられた可能性を示唆するジュンウォン(ハン・ソッキュ)。
だが、にわかに信じ難い局長(ユン・ジュサン)が「北側の首脳陣と幹部トップが30人もいるんだぞ!」と反論。
本当にここで?北の真意が見えないジュンウォンは漠然とした不安に襲われる──
同じ頃、北朝鮮第8特殊部隊長ムヨン(チェ・ミンシク)と、精鋭兵はスタジアム内にある変電室を襲撃。
そして、韓国大統領と北朝鮮主席が座る貴賓席の真上の照明だけを点灯させた。
観戦席でそれを見たミョンヒョン(キム・ユンジン)も、その時を待つ──
観客をかき分けるジュンウォンは、舞い上がった風船を見上げ不自然な照明に気づく。
液体爆弾CTXは光と熱によって爆発が起こると学んだ彼は走り出し、遂にムヨンと対峙する。
「望みは?」「戦争だ “邪魔者”は消さなければ」
朝鮮戦争から50年。ムヨンは抱えて来た思いを吐き出す。
政治屋の他は人間らしい生き方が叶わない北朝鮮。
祖国の統一に命を懸けて来た者をコケにするかのようなサッカーで南北統一。
「…ふざけるな 朝鮮の新しい歴史は“我々”の手で開く」──
自分の死すら恐れないムヨンに共鳴する北の戦闘員が、ジュンウォンに銃口を向ける。
その時、秘密情報部員が駆け付け激しい銃撃戦へ。
照明を消そうと死に物狂いで手を伸ばすジュンウォンに「バンヒが嘲笑っているだろう」とムヨン。
だが、ソンシク(パク・ヨンウ)の銃弾に倒れ、成し遂げることは出来なかった──
消えた照明に失敗を悟ったミョンヒョンは、立ち上がって貴賓席へ。
そして、多くの護衛に阻まれても突き進む彼女の前に、ジュンウォンは立ちはだかる。
スタジアムから走り去る、統一旗をつけた車。
彼のうしろにそれを見たミョンヒョンは発砲し、ジュンウォンに射殺された──
後日、ミョンヒョンは妊娠していたと判明。
「イ・バンヒとの出会いは?」「イ・ミョンヒョンです」
事情聴取に対し、2人の出会いはごく自然なものと信じているジュンウォンは彼女を庇う答えを貫く。
留守電には、彼を想っている彼女のメッセージが残されていた──
済州島を訪れたジュンウォン。
キッシンググラミーを受け取り微笑むミョンヒョンは「お姉さんが好きだった曲よ(When I Dream)」と教えた。
その歌声を聞くジュンウォンは、切ない表情を浮かべる──