コメディ

映画『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』|浮気夫に死の制裁を…衝撃の実話をブラックユーモアたっぷりドタバタ喜劇でお届けします!


原題『I Love You to Death』1990年製作

──イタリア人のジョーイは妻子持ちのくせに“浮気”がライフワークの中年オヤジ。たとえバレても夫婦の愛は一生冷めない自信があった。でもそれはジョーイの自分勝手な思い込み。何故なら、浮気現場を目撃した妻ロザリーが、夫の殺害計画を“現在進行中”なのだから…。

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ゆきお

フィクション映画の題材として“夫の殺害を企てる”はありそうだが、本作は1984年にアメリカで実際に起きた殺人未遂事件が基になっている。我が身に降りかかればゾッとする出来事。しかし、個性的なキャラクターだらけの『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』は脱力系で愛を感じられる映画だ。浮気夫ジョーイを演じた名優ケヴィン・クラインをはじめ人気俳優が集結した本作は、若き日のキアヌ・リーブスリヴァー・フェニックスの初共演作としても有名。ジョーイ殺害計画”に首を突っ込むマーロン役のキアヌは見るからに頼りない。のちに凄腕の殺し屋になるなんて誰が思う!?そのギャップも楽しめる。

ここから先は、映画『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』結末ネタバレありのストーリーを綴ります。(本編1時間36分)

また、下記の時間表は、あくまでも目安です。

アメリカで暮らすジョーイ(ケヴィン・クライン)とロザリー(トレイシー・ウルマン)は夫婦。
イタリア人のジョーイが焼くピザは老若男女に愛されて、夫婦が営むピザ屋は連日大忙しだ。

オーダーをこなしつつ店内をくまなく見渡すジョーイは、色っぽいミニスカート姿の常連客を褒める。
ジョーイにとって、素敵な女性に声を掛けるのは当然だった。

ピザを運んだり手が塞がったジョーイをフォローするのは、阿吽の呼吸の妻ロザリー
電話対応を終えたジョーイの首元から受話器を外すと、せわしなくテイクアウトの準備へ。

再び鳴った電話に威勢よく出たジョーイだったが「君か(Hey baby~)」と、猫なで声に。
真横に立つ従業員ディーボ(リヴァー・フェニックス)は、“真っ黒(浮気)”だと疑っていた──

昼ピークも一段落すると、身だしなみを整えたジョーイが工具箱を持って外出。
行き先は、ピザ屋から歩いてすぐの場所にあるアパートでジョーイがオーナーだ。

自ら水道管の修理をする責任感の強い男を装って、居住中の女性レイシーと情事を重ねている。
日頃から怪しんでいたディーボの予想通り、ジョーイは真っ黒だった。

あれこれ悪い事を想像するディーボとは違い、気持ちが揺らぐことはないロザリー
イタリア人のジョーイが“色目を使う”のは当然だと思うし何より夫を信じている。

そこまで一途なロザリーに「万が一、浮気したら?」と、真剣に聞くディーボ
返ってきた答えは「私、死んじゃうわ …ソレがだめなら ジョーイを殺してやる」──

わんぱく盛りの子供たちを愛する良き父である彼は、妻ロザリーの事だって凄く愛していた。
生涯の伴侶はただ一人、ロザリーなのは本心。

にもかかわらず素敵な女性を口説かずにはいられない性分だ。
同居するロザリーの母ナジャ(ジョーン・プロウライト)と相性最悪でも、出会う女性は彼に惹かれてしまう。

仕事熱心な夫ジョーイが息抜き出来るなら、外に飲みに行くのも構わないロザリー
ところが、ディーボが言った“浮気”が頭から離れず、今夜はあれこれ理由を付けて引き留める。

結局、それをサラリとかわすジョーイは、その夜も口説いた女性(フィービー・ケイツ)と──

ロザリーを愛していながら浮気するジョーイ
何を言っても能天気な返事ばかりのダメ店主をディーボもつくづく嫌になる。

そして、ジョーイを一途に愛しているロザリーを見ていると切なくもなった──

今より若い頃、強引なジョーイ(ケヴィン・クライン)に口説かれて、恋に落ちたロザリー(トレイシー・ウルマン)。
今では子持ち、そんな自分を好いてくれるディーボ(リヴァー・フェニックス)には優しく微笑むだけだ。

ある日、ディーボと同じ年くらいの女性ブリジット(ヘザー・グラハム)がやって来た。
どうやらアパートを“ダシ”にジョーイが口説いたようだ。

オーナーの妻としてロザリーがアパートまで案内すると、“修理”を終えたジョーイと鉢合わせる。
取って付けたような理由でブリジットを帰し、ロザリーとピザ屋に戻って行くジョーイ

先ほど“修理”を終えた部屋に帽子を忘れるヘマもしたが、やきもちを焼くロザリーと愛を再確認。
それでも「修理は職人に…」なんて言う、妻のバカバカしい提案は聞き流す──

家族でレストランへ行ったジョーイだが、ここでも義母ナジャ(ジョーン・プロウライト)と喧嘩が始まる。
我が強い夫と母親の間で気が滅入るロザリー

だけど、二人の喧嘩よりもっと最大級のショックを受ける出来事を目撃してしまう。

それは図書館に行った時のこと。本棚を眺めて歩いていると、聞こえたのはジョーイと女性の話し声。
ロザリーに気づかないジョーイは「(奥さんは?)平気だよ」と、女性を抱き寄せ図書館を出て行った。

女性にモテるけど浮気する夫じゃない…
一人で傷ついて馬鹿を見たロザリーに、母親ナジャは離婚をすすめる。

するとロザリーは「他の女性にジョーイを… そんなの絶対に嫌!だったら、殺してやるわ」──

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ゆきお

ロザリー以上に前のめりなのはナジャの方だ。自称:殺人経験アリっぽい親友の孫まで巻き込んだ、彼女自身が主犯の凶行とは…

親友の孫リンカーン大統領のマスクを被ってバットを振るも空振り。ジョーイに逆襲され逃げ出した!
ナジャ毎朝一人で出勤するジョーイの車に、エンジンをかけると爆発するよう細工。だが、今日に限って何も知らないロザリーが同乗!?幸い不発に終わる。

騒々しくも真剣な母娘の“ジョーイ殺害計画”は、これからが本番だ。

子供たちが外泊する週末がやって来た。

ロザリーナジャが手作りする辛口トマトソースの隠し味は睡眠薬2瓶分。
その後、自分好みのスパゲティに“おかわり”を繰り返したジョーイに効果が現れて弱り始める。

だけど、最期の雰囲気ではなく「クソしたら治った」と、上機嫌だ。

連日、仕事と浮気でフル稼働のジョーイの体力と精力は底なし。
再びスパゲティを“おかわり”する夫より先に、ロザリーの方が寝落ちしてしまう──

ソファーで眠るロザリーの隣で、食べかけのスパゲティを持ったジョーイが遂に寝た。

その拍子に目が覚めたロザリーは、殺気立つ母親ナジャから銃を取り上げる。
「私たちが撃つなんて…」と、怖がるロザリーを見て、考え直したナジャ

そして、ロザリーに片想いしているピザ屋のディーボを呼び出す──

大好きなロザリー(トレイシー・ウルマン)のために、殺人を引き受けたディーボ(リヴァー・フェニックス)。
寝ているジョーイ(ケヴィン・クライン)を寝室に運び、差し出された銃を受け取るその表情は暗い。

ディーボを残して、外に逃げ出すロザリーナジャ(ジョーン・プロウライト)。
今か今かと緊張していると、銃声が聞こえて寝室に駆け上がる──

人を撃った経験などないディーボは、怖くてその瞬間は目を閉じたから命中したかは不明。
ベッドに横たわるジョーイの顔を覗き込むと、トマトソースのせいで赤い顔をしているだけだ。

大好きな女性に責められて半泣きのディーボを慰めるナジャ
すると、シーツに付いた血を見つけたロザリージョーイの頭に弾痕を見つける。

ジョーイ…」と、繰り返し名前を呼んで死亡確認。
すると「ロザリー 何だ」と、返事!?

あれこれ言い訳して、どうにか病気だと信じ込ませたロザリー
睡眠薬入りスパゲティと銃弾のせいで体調は悪そうでもジョーイは死んでなかった──

すっかり怖気づくディーボだが、“ジョーイ殺害計画”から降りずに次の手段を考える。

そして思い付いたのは、ヤバい事でも金を払えば引き受けそうな知り合いだ。
金に糸目はつけないロザリー。対してナジャは「出来るだけ値切ってね」と、ディーボを送り出す。

ハーラン(ウィリアム・ハート)と、彼の従弟マーロン(キアヌ・リーブス)。

虚ろな目をした二人は麻薬常習者。たった300ドルで殺人を依頼するディーボに向かって声を荒げる。
「人をバラすんだぜ 金はもらわなきゃ」と、一歩も引かない二人に譲歩するディーボ

500ドルで交渉は成立した──

ジョーイ宅に戻ったディーボは、遅れてやって来たハーランマーロンに唖然。
これから殺人を犯すのに、タクシーに乗って変装もしていない。

締まりのない顔、しかも麻薬常習者!?それを知ったロザリーは困惑するがナジャは打ち解けた──

使用する銃を受け取り「22口径か 小さくてパワーがねぇ」と、誰よりも知った風のハーラン
銃声をかき消す音楽を流すよう指示されたナジャは、お気に入りのレコード探しを始める。

ベッドで寝ているジョーイを見て「殺しは経験ねぇ」と、怖がり出すマーロン
すると「俺も初めてだけどよ…」と、瞳孔が開くハーランは気持ちを奮い立たせる──

その後も、銃声をかき消す音楽が聴こえてこず待機するハーランマーロン

レジー・ジャクソンのサイン入りバットを握って興奮したり、ジョーイの隣で読書して待つ。
だけど、遂に決心したハーランジョーイを撃ち抜き、銃声はリビングに居るロザリーたちにも聞こえた。

殺害計画をやり遂げてホッとした男三人とナジャは乾杯するが、ロザリーは大泣き。
「神様!どうかジョーイを戻してください…」と懺悔。

すると、確かに胸を撃たれて背中も血で染まっているジョーイが現れた。
ありえない恐怖に戦慄するロザリーディーボ

ナジャに睨まれるハーランマーロンは、減額された報酬200ドルを受け取り退散。
そして、この“ジョーイ殺害計画”をやり遂げたと、堂々と話を盛って仲間に自慢するのだった──

ジョーイ(ケヴィン・クライン)を殺害した! その成功報酬で5000ドル稼いだ‼」
そんなハーラン(ウィリアム・ハート)とマーロン(キアヌ・リーブス)の話は、スグに警察に届く。

ラリー刑事(ジェームズ・ギャモン)とカルロス刑事(ジャック・ケーラー)は、真相を確かめるためジョーイ宅へ。
突然の訪問に焦るロザリー(トレイシー・ウルマン)だが、うまく追い返すことは出来なかった。

彼女の言う通り、ベッドで横になっているジョーイは元気がなく確かに病気っぽい。
だけど、何かが引っ掛かるラリー刑事は、ジョーイにへばりつくロザリーをどかす。

「何てこった 頭に弾が…」

絶対におかしい状況にもかかわらず、平然を装うナジャ(ジョーン・プロウライト)。
ディーボ(リヴァー・フェニックス)は、絆創膏を取りに行くふり。

ロザリーまで「マフィアに襲われた」とか「ジョーイが病院に行きたがらない」と、言い訳ばかり。

確かにジョーイ本人も行く気はないようだが、由々しき事態にラリー刑事は救急車を要請。
頭に残っていた銃弾を取り出す緊急手術が始まり、2発も撃たれたジョーイは奇跡的に生き延びる。

その後、この殺人未遂事件に関与したロザリーナジャディーボ
ハーランマーロンが逮捕された──

入院するジョーイのお見舞いにやって来たのは、アパートに居住中の浮気相手レイシーだ。
早速、デレっとするかと思いきや、ジョーイは別れを告げる。

ロザリーに恨みも抱いたが、元はと言えば自分が悪い。
「いい旦那になる もっと家庭を大事にする」と、この数日で改心していた。

鉢合わせたジョーイの母親(ミリアム・マーゴリーズ)にも睨まれるレイシーは、散々な気持ちで帰って行く。

二人だけの病室で、馬鹿な息子ジョーイを叱り飛ばす母親。
頭が上がらないジョーイは、ちゃんとロザリーに謝ると約束する──

退院後、警察へ行きラリー刑事にロザリーたちの保釈を申し出るジョーイ
「また、殺されるかもしれんぞ」との忠告も重々承知。

そうなる理由は自分のせいであり、ロザリーが愛してくれている証拠でもある。
何より、大事な子供たちのためにも彼女は必要だ──

いよいよ保釈される日。子供たちも母親に会えるのを楽しみにしていた。

一緒に保釈されたハーランマーロンは、撃った事を謝るとジョーイの気が変わらないうちに退散。
「お前の忠告を聞くべきだった」と、素直になったジョーイディーボ抱きつく。

厳しい顔をした義母ナジャに対しても「二度としない」と約束。
可愛い孫たちと再会したナジャは許すのだった──

ロザリーに花束を渡して、もう一度プロポーズするジョーイ

だけど、夫を殺そうとした自分が許せないロザリーは花束を投げつけ逃げてしまう。
追い掛けるジョーイは、ロザリーが飲ませてくれた睡眠薬が出血を抑えたと強引に肯定。

「君は、俺を殺したいほど愛してくれる 夫じゃなくて男として見てくれる その情熱…」
すると、抱き合っていたはずのロザリージョーイに平手打ち。

「私の夫よ自信を持ちなさい」と、愛情たっぷり叱り飛ばす──

ジョーイロザリーの愛の炎が燃え上がり、やっぱり片想い止まりのディーボ
また浮気するのではないかと心配そうな彼に「その時はまた、撃ち殺す! 冗談よ」と、ナジャは微笑む──