原題『Avengement』2019年製作
──いかつい風貌の囚人ケインが、ムショ暮らしを始めて数年。母親の亡骸と対面後、彼は逃亡した…。チンピラの溜まり場になっている、パブに入ったケイン。そこに彼を知る者は皆無。だが、“因縁の相手”ハイドと再会。こいつらを人質に取ったケインは、生か死の二択しかない囚人生活を語りながら、実兄リンカーンの到着を待つ。
DVD邦題は『ウルフ・オブ・リベンジ 復讐の狼』 ストーリーに目新しさはないものの、主人公ケインが凶悪ヅラに変わり果てる経緯、心技体の成長にグイッと引き込まれてしまう。私見ではフラストレーションが溜まる感覚もあったけど、とある描写でパーッと発散できた。傑作とは言えなくとも、スコット・アドキンスの主演映画の中では、小気味良くまとまった好きな作品ですね。
脂が乗ったアラフィフ世代のアクション俳優スコット・アドキンス。主演作品は、軒並み日本の劇場未公開。それにもかかわらず、彼のアクションを欲する映画ファンは多い。 『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(2023年)ではキーラ役で大暴れ!本作より格も上がり“金歯”だ。いよいよ来日して熱狂されるアクションスターになれそう…で、なれない!?B級作品がシックリくるアドキンスを初めて知った人は、どうぞ名前と顔だけでも覚えてやってくれ。私は“あらすじ”係だから掘り下げはしないが、格闘技の経歴やキレッキレの動きを見てもらえば、彼が本物である事は分かるはずだ。
出典:Samuel Goldwyn Films Official YouTube Channel『Avengement』Trailer
ここから先は、映画『アヴェンジメント』結末ネタバレありのストーリーを綴ります。(本編1時間28分)
また、下記の時間表は、あくまでも目安です。
1 映画『アヴェンジメント』0h00m~0h20m
囚人ケイン(スコット・アドキンス)を乗せた護送車が、病院へ向かう。
しかし、その到着を待たずに亡くなった母親。
警官と手錠で繋がれたケインは、安置室で母親の亡骸と失意の対面を果たす。
護送車へ戻るため再びエレベーターに乗り込み…、警官を襲撃したケインは逃亡した──
勝ち気な女店主ベズ(カーストン・ウェアリング)が営むパブの先客は、チンピラ数人。
最近、こいつらの周りでは行方不明者が出たり、殺人といった物騒な事が続いていた。
そして、若いチューン(トーマス・ターグーズ)が“殺人鬼”の話をはじめる。
連中に背を向けていたケインも、黙って話を聞くことに。
暗がりでヤクの売買をしていると、向こうの方で襲われている仲間が見えた。
手を切り落とされた仲間のために殺人鬼を追うが逃げられ、現場に戻ると手も無かった。
すると、一目散に逃げた大嘘つきのチューンに、笑いを堪えきれない話題の“殺人鬼ケイン”。
襲い掛かるチンピラを拳で沈め、こいつらが身を置く組織のボスであるリンカーン(クレイグ・フェアブラス)の名を叫ぶ──
物騒な音がする店内に顔を出したハイド(ニック・モラン)は、予想外の再会に冷笑。
何も知らないチンピラに“リンカーンの弟”と紹介し、“しくじって”刑務所に行ったとコケにする。
リンカーンに甘えっぱなしのケインが殺人鬼?あり得ない。
だが、躊躇なしの発砲、切り落としたチンピラの手。その冷酷さを目の当たりにして、顔が歪む。
人が変わったのは“凶悪犯を収容するベルマーシュ刑務所の暮らしのせい”と、さも当然のように言うハイド。
すると、恨みをたぎらせるケインは、兄リンカーンをパブに呼び出せと命令。
到着を待つ間、3人の過去に何があったのか気になるチンピラに、“こうなった”経緯を話し始めた──
八百長試合で上手に負ける事も出来ない、馬鹿正直なケイン。
組織の者たちも、商才に長ける兄リンカーンとは違う弟にウンザリしていた。
商才もないくせに事業資金をせびる弟に、家族から“取り立て”はしたくないとやんわり拒否するリンカーン。
だが、甘ちゃんの弟は引かず、金が欲しいなら“ひと働き”してもらうしかないと選択を迫る。
格闘は出来ても“悪さ”は気が進まないケイン。だが、兄がくれたチャンスをモノにする道を選んだ。
2 映画『アヴェンジメント』0h21m~0h44m
早速、ハイドの事務所に行き、指示通りビニール袋を“ひったくる”仕事を実行した。
そして、凶悪犯と生活を送ることになって早々、喧嘩を売られた囚人ケインは顎を骨折。
面会に来た母親から聞かされた、兄リンカーンの様子は仕事で多忙。
助けてくれると信じるケインが売られた喧嘩を買えば、正当防衛は認められず刑期延長。
しかし、自己鍛錬こそ生き抜く術との境地に達し、無数の囚人と“試合”に明け暮れる──
穏やかな口調で語られる壮絶な生活を、集中して聞くチンピラ。
すると、刑務所内で目の敵にされた理由に迫るケインが、シラを切るハイドに銃を向けた。
ある囚人が言うには、ケイン殺害で2万ポンド。
卑劣なハイドならやりかねない。だが、兄リンカーンが首謀者なんて、ケインは認めたくなかった。
折れそうな心を鍛えるために、囚人との試合も狂暴性が増して行ったケイン。
遂に、“手製のナパーム弾”を浴びてしまい、顔に火傷を負ってしまう。
1人で大勢を相手にしては独房行きを繰り返し、刑期だけが延びた──
三年ぶりに面会に来た母親は、変わり果てたケインを心配する。
こうなってしまった真実を話そうとするケインだったが、胸にしまった。
癌だと打ち明ける母親を支えてくれるのは、兄リンカーンだからだ。
結局、次に会えたのは安置室。生きている頃の母親を思いながら、切々と語るケイン。
チンピラの期待に応えて、エレベーター内で起こした警官襲撃、服と金を盗んだ様子を教えた。
すると、ふてぶてしいケインが我慢ならないハイドは、“作り話”ではなく“目的”を言えと煽る。
だが、兄リンカーンが来るまでは、ハイドを生かすケイン。
そして、簡単に済むはずだった、“ビニール袋をひったくった”あの日の状況を話し出す──
3 映画『アヴェンジメント』0h45m~1h04m
ハイドの説明通り、彼の事務所に来た女性メイベルがビニール袋を受け取った。
任された仕事を実行するケインは、帰る彼女を尾行してビニール袋が入った鞄を奪い逃走。
ところが、ケインの気が咎めるほど、メイベルは必死に追いかけて来る。
そして、ビニール袋だけを握りしめるケインの後ろで、急ブレーキと衝突音が響く。
動かないメイベル。呆然と立ち尽くすケインは、逮捕された──
ビニール袋の中身も知らないケインに、オハラ刑事(ルイス・マンディロア)は事件の全貌を話す。
組織のボスであるリンカーンとハイド。
借金が返せない者に運び屋の仕事を与えてはソレを“ひったくり”、損失の事実をでっち上げるのが2人の手口。
その後、横暴な取り立てを繰り返し、家族崩壊に追い込む。そんな凶悪組織を、壊滅させたいオハラ刑事。
図らずも犯罪に加担したケインは、しくじりを恐れて必死だったメイベルを事故死させてしまった。
しかし、兄を信じていた当時のケインは、リンカーンの引き渡しを要求するオハラ刑事に盾突く。
その後、別室に入れられ、エヴァンス巡査から執拗な暴力を受けるのだった──
開かないパブの扉を叩くリンカーン。
待ち続けた兄が遂に現れると、ケインは人質のハイドに銃口を突き付けて迎える。
店内に転がったチンピラの死体。組織の人間を2人も殺した弟。
しかめ顔のリンカーンに説教じみた事を言われたケインは、賞金首にされて味わった苦しみをぶちまけた。
すると、“兄を警察に売って組織を潰そうとした弟”に、2万ポンドを懸けただけと反論されてしまう。
だが、暴力に耐えて黙秘を貫いたケインは、悪徳巡査エヴァンスに騙された兄を馬鹿にする。
リンカーンの内通者だったエヴァンスは警察をクビになり、現在この世には居ない。
何故なら、病院から逃亡したケインに殺されたから──
復讐に駆られる弟に、死んだ母親の事を切り出すリンカーン。
最期を看取れなかった悲しみが蘇るケインは、危篤の母親よりも仕事を優先した兄に怒りが湧く。
反抗的な弟に、リンカーンは事故死したメイベルの名をあげた。
そして、馬鹿な真似はやめて人生をやり直せと諭す。
すると、「他の人たちは?」と、組織から全て搾取された者の名を呼ぶケイン。
だが、ソレを聞くリンカーンには慈悲の欠片もなかった。
ケインは、同様に御託を並べるハイドの頭を撃ち抜く──
4 映画『アヴェンジメント』1h05m~1h28m
怒りに震えるリンカーンとチンピラたちに、組織壊滅のために施した仕上げが伝えられる。
逃亡後、ケインが上がり込んだのは、組織の会計係ストークス(テレンス・メイナード)の自宅。
変わり果てた風貌に、はじめは気づかなかったストークス。
だが、暴力が苦手な彼は、頼まれた通りに組織の口座から金を動かし、この町を出た──
メイベルの事故死。兄リンカーンが崩壊させた、多くの家族。
すべての贖罪を背負ったからこそ、ケインは地獄のような刑務所暮らしを耐えられた。
そして、唯一分かり合えた、オハラ刑事のお陰だ──
ケインが持っている銃に弾は2発、戦う相手は10人。
勝機があるリンカーンの追い風となったのは、背後からケインの頭を、瓶で殴りつける女店主。
動き出したチンピラに、ケインは発砲。1人が死ぬと大乱闘が始まった──
遂に、ケインとリンカーン、女店主だけが生き残った店内。
血まみれの顔で満足そうに“しくじった兄”を見る弟に、リンカーンは銃を向け引き金を引く。
だが、思いもしなかった弾切れに焦る兄をケインは嘲笑う。
「汚れ仕事を人任せにするから 充填の確認を忘れるんだ… 使い切ってるよ マヌケ」
そして、リンカーンを殺し、パブを去った。
薄れゆく意識の中で、組織に金を搾取された者たちへの、償いが果たされた時のことを思うケイン。
あの時、会計係のストークスに頼んだのは、組織の金を彼らの口座に振り込む事だった。その数147家族分。
この思いがけない出来事は警察に報告され、オハラ刑事もケインを思い浮かべる──
暗転すると分かり易く映画の終わりを告げるアレが出る。もちろんここで終わっても良いが、エンドクレジットを観るのもまあ悪くない。残り1分、あるシーンが映される。本編ではカットされたか?くらいしか思えず、付け加えた真意も謎でしかない。だが、ソレも含めて私は嫌いじゃない。