アクション

生き地獄を味わった男のフルボッコ復讐映画『アヴェンジメント』脚本/演出の好アシストで主演スコット・アドキンスの演技も冴え渡る⁉


原題『Avengement』2019年製作

──いかつい風貌の囚人ケインが、ムショ暮らしを始めて数年。母親の亡骸と対面後、彼は逃亡した…。チンピラの溜まり場になっている、パブに入ったケイン。そこに彼を知る者は皆無。だが、“因縁の相手”ハイドと再会。こいつらを人質に取ったケインは、生か死の二択しかない囚人生活を語りながら、実兄リンカーンの到着を待つ。

ツトム
ツトム

DVD邦題は『ウルフ・オブ・リベンジ 復讐の狼』                    ストーリーに目新しさはないものの、主人公ケインが凶悪ヅラに変わり果てる経緯、心技体の成長にグイッと引き込まれてしまう。私見ではフラストレーションが溜まる感覚もあったけど、とある描写でパーッと発散できた。傑作とは言えなくとも、スコット・アドキンスの主演映画の中では、小気味良くまとまった好きな作品ですね。

キャスト

ケイン・バージェス/スコット・アドキンス                                      出演作:『ニンジャ・アベンジャーズ』『アクシデントマン』シリーズ『イップ・マン 完結』『ジョン・ウィック:コンセクエンス』他

リンカーン・バージェス/クレイグ・フェアブラス                                   出演作:『UKギャングスター イギリスで最も恐れられた男』『バンク・ジョブ』『ラン・オブ・ザ・デッド』他

チューン/トーマス・ターグーズ                                           出演作:『バイオレンス・レイク』『ディス・イズ・イングランド』『クリエイション・ストーリーズ 世界の音楽シーンを塗り替えた男』他

ハイド/ニック・モラン                                               出演作:『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』『アクシデントマン』他

ゆきお
ゆきお

脂が乗ったアラフィフ世代のアクション俳優スコット・アドキンス。主演作品は、軒並み日本の劇場未公開。それにもかかわらず、彼のアクションを欲する映画ファンは多い。  『ジョン・ウィック:コンセクエンス』(2023年)ではキーラ役で大暴れ!本作より格も上がり“金歯”だ。いよいよ来日して熱狂されるアクションスターになれそう…で、なれない!?B級作品がシックリくるアドキンスを初めて知った人は、どうぞ名前と顔だけでも覚えてやってくれ。私は“あらすじ”係だから掘り下げはしないが、格闘技の経歴やキレッキレの動きを見てもらえば、彼が本物である事は分かるはずだ。

スタッフ

監督/ジェシー・V・ジョンソン                                          『マキシマム・ブロウ』『アクシデントマン』『マシンガン・ファーザー 悪党に裁きの銃弾を』他

脚本/ジェシー・V・ジョンソン ステュー・スモール 

音楽/ショーン・マーレイ

出典:Samuel Goldwyn Films Official YouTube Channel『Avengement』Trailer

ここから先は、映画『アヴェンジメント』結末ネタバレありのストーリーを綴ります。(本編1時間28分)

また、下記の時間表は、あくまでも目安です。

1 映画『アヴェンジメント』0h00m~0h20m

囚人ケイン(スコット・アドキンス)を乗せた護送車が、病院へ向かう。

しかし、その到着を待たずに亡くなった母親。

警官と手錠で繋がれたケインは、安置室で母親の亡骸と失意の対面を果たす。

護送車へ戻るため再びエレベーターに乗り込み…、警官を襲撃したケインは逃亡した──

勝ち気な女店主ベズ(カーストン・ウェアリング)が営むパブの先客は、チンピラ数人。

最近、こいつらの周りでは行方不明者が出たり、殺人といった物騒な事が続いていた。

そして、若いチューン(トーマス・ターグーズ)が“殺人鬼”の話をはじめる。

連中に背を向けていたケインも、黙って話を聞くことに。

暗がりでヤクの売買をしていると、向こうの方で襲われている仲間が見えた。

手を切り落とされた仲間のために殺人鬼を追うが逃げられ、現場に戻ると手も無かった。

すると、一目散に逃げた大嘘つきのチューンに、笑いを堪えきれない話題の“殺人鬼ケイン”。

襲い掛かるチンピラを拳で沈め、こいつらが身を置く組織のボスであるリンカーン(クレイグ・フェアブラス)の名を叫ぶ──

物騒な音がする店内に顔を出したハイド(ニック・モラン)は、予想外の再会に冷笑。

何も知らないチンピラに“リンカーンの弟”と紹介し、“しくじって”刑務所に行ったとコケにする。

リンカーンに甘えっぱなしのケインが殺人鬼?あり得ない。

だが、躊躇なしの発砲、切り落としたチンピラの手。その冷酷さを目の当たりにして、顔が歪む。

人が変わったのは“凶悪犯を収容するベルマーシュ刑務所の暮らしのせい”と、さも当然のように言うハイド

すると、恨みをたぎらせるケインは、兄リンカーンをパブに呼び出せと命令。

到着を待つ間、3人の過去に何があったのか気になるチンピラに、“こうなった”経緯を話し始めた──

八百長試合で上手に負ける事も出来ない、馬鹿正直なケイン

組織の者たちも、商才に長ける兄リンカーンとは違う弟にウンザリしていた。

商才もないくせに事業資金をせびる弟に、家族から“取り立て”はしたくないとやんわり拒否するリンカーン

だが、甘ちゃんの弟は引かず、金が欲しいなら“ひと働き”してもらうしかないと選択を迫る。

格闘は出来ても“悪さ”は気が進まないケイン。だが、兄がくれたチャンスをモノにする道を選んだ。

2 映画『アヴェンジメント』0h21m~0h44m

早速、ハイドの事務所に行き、指示通りビニール袋を“ひったくる”仕事を実行した。

そして、凶悪犯と生活を送ることになって早々、喧嘩を売られた囚人ケインは顎を骨折。

面会に来た母親から聞かされた、兄リンカーンの様子は仕事で多忙。

助けてくれると信じるケインが売られた喧嘩を買えば、正当防衛は認められず刑期延長。

しかし、自己鍛錬こそ生き抜く術との境地に達し、無数の囚人と“試合”に明け暮れる──

穏やかな口調で語られる壮絶な生活を、集中して聞くチンピラ。

すると、刑務所内で目の敵にされた理由に迫るケインが、シラを切るハイドに銃を向けた。

ある囚人が言うには、ケイン殺害で2万ポンド。

卑劣なハイドならやりかねない。だが、兄リンカーンが首謀者なんて、ケインは認めたくなかった。

折れそうな心を鍛えるために、囚人との試合も狂暴性が増して行ったケイン

遂に、“手製のナパーム弾”を浴びてしまい、顔に火傷を負ってしまう。

1人で大勢を相手にしては独房行きを繰り返し、刑期だけが延びた──

三年ぶりに面会に来た母親は、変わり果てたケインを心配する。

こうなってしまった真実を話そうとするケインだったが、胸にしまった。

癌だと打ち明ける母親を支えてくれるのは、兄リンカーンだからだ。

結局、次に会えたのは安置室。生きている頃の母親を思いながら、切々と語るケイン

チンピラの期待に応えて、エレベーター内で起こした警官襲撃、服と金を盗んだ様子を教えた。

すると、ふてぶてしいケインが我慢ならないハイドは、“作り話”ではなく“目的”を言えと煽る。

だが、兄リンカーンが来るまでは、ハイドを生かすケイン

そして、簡単に済むはずだった、“ビニール袋をひったくった”あの日の状況を話し出す──

3 映画『アヴェンジメント』0h45m~1h04m

ハイドの説明通り、彼の事務所に来た女性メイベルがビニール袋を受け取った。

任された仕事を実行するケインは、帰る彼女を尾行してビニール袋が入った鞄を奪い逃走。

ところが、ケインの気が咎めるほど、メイベルは必死に追いかけて来る。

そして、ビニール袋だけを握りしめるケインの後ろで、急ブレーキと衝突音が響く。

動かないメイベル。呆然と立ち尽くすケインは、逮捕された──

ビニール袋の中身も知らないケインに、オハラ刑事(ルイス・マンディロア)は事件の全貌を話す。

組織のボスであるリンカーンハイド

借金が返せない者に運び屋の仕事を与えてはソレを“ひったくり”、損失の事実をでっち上げるのが2人の手口。

その後、横暴な取り立てを繰り返し、家族崩壊に追い込む。そんな凶悪組織を、壊滅させたいオハラ刑事。

図らずも犯罪に加担したケインは、しくじりを恐れて必死だったメイベルを事故死させてしまった。

しかし、兄を信じていた当時のケインは、リンカーンの引き渡しを要求するオハラ刑事に盾突く。

その後、別室に入れられ、エヴァンス巡査から執拗な暴力を受けるのだった──

開かないパブの扉を叩くリンカーン

待ち続けた兄が遂に現れると、ケインは人質のハイドに銃口を突き付けて迎える。

店内に転がったチンピラの死体。組織の人間を2人も殺した弟。

しかめ顔のリンカーンに説教じみた事を言われたケインは、賞金首にされて味わった苦しみをぶちまけた。

すると、“兄を警察に売って組織を潰そうとした弟”に、2万ポンドを懸けただけと反論されてしまう。

だが、暴力に耐えて黙秘を貫いたケインは、悪徳巡査エヴァンスに騙された兄を馬鹿にする。

リンカーンの内通者だったエヴァンスは警察をクビになり、現在この世には居ない。

何故なら、病院から逃亡したケインに殺されたから──

復讐に駆られる弟に、死んだ母親の事を切り出すリンカーン

最期を看取れなかった悲しみが蘇るケインは、危篤の母親よりも仕事を優先した兄に怒りが湧く。

反抗的な弟に、リンカーンは事故死したメイベルの名をあげた。

そして、馬鹿な真似はやめて人生をやり直せと諭す。

すると、「他の人たちは?」と、組織から全て搾取された者の名を呼ぶケイン

だが、ソレを聞くリンカーンには慈悲の欠片もなかった。

ケインは、同様に御託を並べるハイドの頭を撃ち抜く──

4 映画『アヴェンジメント』1h05m~1h28m

怒りに震えるリンカーンとチンピラたちに、組織壊滅のために施した仕上げが伝えられる。

逃亡後、ケインが上がり込んだのは、組織の会計係ストークス(テレンス・メイナード)の自宅。

変わり果てた風貌に、はじめは気づかなかったストークス

だが、暴力が苦手な彼は、頼まれた通りに組織の口座から金を動かし、この町を出た──

メイベルの事故死。兄リンカーンが崩壊させた、多くの家族。

すべての贖罪を背負ったからこそ、ケインは地獄のような刑務所暮らしを耐えられた。

そして、唯一分かり合えた、オハラ刑事のお陰だ──

ケインが持っている銃に弾は2発、戦う相手は10人。

勝機があるリンカーンの追い風となったのは、背後からケインの頭を、瓶で殴りつける女店主。

動き出したチンピラに、ケインは発砲。1人が死ぬと大乱闘が始まった──

遂に、ケインリンカーン、女店主だけが生き残った店内。

血まみれの顔で満足そうに“しくじった兄”を見る弟に、リンカーンは銃を向け引き金を引く。

だが、思いもしなかった弾切れに焦る兄をケインは嘲笑う。

「汚れ仕事を人任せにするから 充填の確認を忘れるんだ… 使い切ってるよ マヌケ」

そして、リンカーンを殺し、パブを去った。

薄れゆく意識の中で、組織に金を搾取された者たちへの、償いが果たされた時のことを思うケイン

あの時、会計係のストークスに頼んだのは、組織の金を彼らの口座に振り込む事だった。その数147家族分。

この思いがけない出来事は警察に報告され、オハラ刑事もケインを思い浮かべる──

ゆきお
ゆきお

暗転すると分かり易く映画の終わりを告げるアレが出る。もちろんここで終わっても良いが、エンドクレジットを観るのもまあ悪くない。残り1分、あるシーンが映される。本編ではカットされたか?くらいしか思えず、付け加えた真意も謎でしかない。だが、ソレも含めて私は嫌いじゃない。