アクション

ジョン・トラボルタVSニコラス・ケイジ❘銃を突きつける宿敵は自分自身⁉“1人2役”入れ替わり系映画の傑作『フェイス/オフ』


原題『Face/Off』1997年製作

──激しい銃撃戦の末に、FBI捜査官ショーンは息子を殺害したテロリストのキャスターを逮捕。だが、仕掛けられた爆弾が街のどこかでカウントダウンを始めていた。一刻の猶予も許されない事態に、ショーンは自分の顔と憎悪を抱き続けたキャスターの顔を交換する手術を敢行。そして、唯一在り処を知る偏執的な弟に接触し、すべて上手く行くはずだった。顔を剥ぎ取られた血まみれのキャスターが、覚醒さえしなければ…。

ゆきお
ゆきお

1954年生まれのジョン・トラボルタ。1964年生まれのニコラス・ケイジ。映画の面白さを教えてくれる彼らが私は好きだ。すっかりB級に馴染んで、活躍の場がゴールデンラズベリー賞(最低映画)になろうとも。この映画『フェイス/オフ』は、トラボルタとニコケーが乗っている時期の出演作。絶好調だと言える証は、絶品すぎる表情だ。もちろん、冒頭から貫禄はあるが、まさに怪演が始まる“顔の入れ替え後”は心が高鳴る。善人と悪人の境は紙一重で、冷酷さと愛情を同じように持ち合わせていると感じられる人物描写。少々ツッコミたくなる雑さも全部ひっくるめて、語り継いでいきたいと思える映画だ。

キャスト

ショーン・アーチャー/ジョン・トラボルタ                                      出演作:『パルプ・フィクション』『炎のメモリアル』『ギャング・イン・ニューヨーク』他

キャスター・トロイ/ニコラス・ケイジ                                        出演作:『リービング・ラスベガス』『天使のくれた時間』『PIG/ピッグ』他

ポラックス・トロイ/アレッサンドロ・ニヴォラ                                    出演作:『ジュラシック・パークIII』『さよなら。いつかわかること』『ビューティフル・デイ』他

イヴ・アーチャー/ジョーン・アレン                                         出演作:『ボビー・フィッシャーを探して』『カラー・オブ・ハート』『ルーム』他

スタッフ

監督/ジョン・ウー 『男たちの挽歌』シリーズ 『ワイルド・ブリット』『M:I-2』他

脚本/マイク・ワープ  マイケル・コラーリー

音楽/ジョン・パウエル

ここから先は、映画『フェイス/オフ』結末ネタバレありのストーリーを綴ります。(本編2時間18分)

また、下記の時間表は、あくまでも目安です。

メリーゴーラウンドに乗って、笑い合う父と息子を悲劇が襲う。

テロリストの標的にされた父の名前は、ショーン・アーチャー(ジョン・トラボルタ)職業:FBI捜査官。

その背中に撃ち込まれた弾が胸を貫通し命を取り留めるも、腕に抱いていた4歳の息子の命が奪われる。

引き金を引いたキャスター・トロイ(ニコラス・ケイジ)の足取りは掴めぬまま、苦悶に満ちた6年が経過。

遂に、高飛びの情報がショーン(ジョン・トラボルタ)に舞い込む──

手配したチャーター機の横で、兄の到着を待つポラックス・トロイ(アレッサンドロ・ニヴォラ)。

遅れてやって来たキャスター(ニコラス・ケイジ)は、不出来な弟の解けた靴ひもを結んでやる。

思い通りに事が進み、離陸目前の兄弟は笑い合う。

しかし、FBIの追撃に遭い、ポラックス(アレッサンドロ・ニヴォラ)逮捕。

数名の捜査官を死傷させたキャスター(ニコラス・ケイジ)は、強風で飛ばされ昏睡状態に陥った──

自身の復讐を成し遂げるための、強引な逮捕劇。

その犠牲となった仲間と、長かった戦いの終わりに思いを馳せるショーン(ジョン・トラボルタ)。

そこに、細菌爆弾の設計図が発見されたと報告が入る。

所持していたポラックス(アレッサンドロ・ニヴォラ)は「兄貴に会わせてくれ」と、”はぐらかす”ばかり。

その上、この兄弟を軽んじるFBI局長ヴィクターが、テロの可能性を否定して意見は衝突。

行き詰まるショーン(ジョン・トラボルタ)を、ポラックス(アレッサンドロ・ニヴォラ)が嘲笑う──

真偽を確かめるため、極秘に“潜入捜査官”の準備をしていた特殊班のホリス(CCH・パウンダー)。

彼女はショーン(ジョン・トラボルタ)を連れて、“あの男”が居る研究所に向かう。

ここで行われていたのは、最新鋭の機器を使用した移植手術。

「君の場合は、一時的な“交換”だ…」

研究所の責任者ウォルシュ(コルム・フィオール)が、血液型や髪、体型に至る“二人”の身体的特徴を説明し始める。

“潜入捜査官”とは、キャスター(ニコラス・ケイジ)の顔を移植(全身整形)するショーン(ジョン・トラボルタ)のこと。

その任務は、“兄”となってポラックス(アレッサンドロ・ニヴォラ)からテロの詳細を聞き出す──

無謀な捜査を断るショーン(ジョン・トラボルタ)は、キャスター(ニコラス・ケイジ)と“親密な兄妹”の聴取を急ぐ。

しかし、詳細を知るのは入獄中のポラックス(アレッサンドロ・ニヴォラ)だけとなり、遂に決心する。

長かった戦いの終わりを、分かち合ったばかりの妻イヴ(ジョーン・アレン)。

そして、捜査に没頭するあまり、今も溝が埋まらない高校生の娘ジェイミーにそっと別れを告げた──

手術前。

ショーン(ジョン・トラボルタ)は極秘計画を知るもう一人、同僚捜査官ティト(ロバート・ウィズダム)に結婚指輪を預ける。

手術開始、顔を剥がされるショーン(ジョン・トラボルタ)とキャスター(ニコラス・ケイジ)。

ショーン(ジョン・トラボルタ)は、憎悪を抱く男キャスター(ニコラス・ケイジ)へと、変わり果てる──

手術後、鏡に映った自分を見て、半狂乱になるキャスター(ニコラス・ケイジ)。

ショーン・アーチャー! 君はショーンだ!!」と、同僚ティト(ロバート・ウィズダム)が止めた。

意識が回復したキャスター(ニコラス・ケイジ)の移送を、やるせない気持ちで見ている捜査官たち。

“らしくない”浮かぬ顔の彼が、仲間を騙す罪悪感や不安を抱えるショーンだとは誰も気づかない──

投獄されるキャスター(ニコラス・ケイジ)を待っていたのは、威圧的な看守と因縁がある囚人の手荒い歓迎。

行動を制御する鉄製ブーツも装着した、その心は壊れそうだった。

それでも、己を鼓舞する狂暴な“兄”は、弟ポラックス(アレッサンドロ・ニヴォラ)を欺いて信頼を勝ち取る。

目を覚ました本物のキャスターが、研究所で報復を実行するとは知る由もなかった──

面会日。任務を遂行し、まもなく解放されるキャスター(ニコラス・ケイジ)は笑みをこぼす。

しかし、予期せぬショーン(ジョン・トラボルタ)の出現で一変。絶望に襲われ錯乱する。

価値ある“顔”に変わったテロリストは結婚指輪を見せつけ、孤立無援となったFBI捜査官を愚弄した──

後日、ショーン(ジョン・トラボルタ)の判断で、ポラックス(アレッサンドロ・ニヴォラ)は釈放。

全てを知った弟は、不快な顔に“入れ替わった”兄の計画に協力する。

勝手な司法取引をFBI局長ヴィクターは激怒するが、その甲斐あって爆破テロは阻止された。

この一件で、英雄になったショーン(ジョン・トラボルタ)。

権力と金を得られる人生を手に入れると、入獄中のキャスター(ニコラス・ケイジ)を再び愚弄する──

同僚ティト(ロバート・ウィズダム)らの死を、悼む様子はない。

しかし、“人が変わったように”軽やかなショーン(ジョン・トラボルタ)に、信頼を寄せる捜査官たち。

そして、この夫が“息子を殺した男”だとは、イヴ(ジョーン・アレン)も気づかない──

鏡に映るキャスター(ニコラス・ケイジ)の顔を見つめ、脱獄を決めた本物のショーンは看守に“けしかける”。

電気ショックの罰を受けるため連行された部屋には、すでに囚人が転がっていた。

執行前、鉄製ブーツを脱がされ計画通り身軽になったキャスター(ニコラス・ケイジ)。

囚人を呼び起こし、激闘の末に扉の向こう側へ出るが、この刑務所が建つのは海の上。

追撃されて逃げ場がないキャスター(ニコラス・ケイジ)は、海に飛び込む──

同じ頃、妻イヴ(ジョーン・アレン)とショーン(ジョン・トラボルタ)は墓地へ。

この日は、死んだ息子マイケルの誕生日だった──

神妙な面持ちのショーン(ジョン・トラボルタ)に、脱獄の件を報告する捜査官。

キャスター・トロイが死にました。息子さんの誕生日に… 天罰ですね」

死体は上がっていない事実を気にも留めない捜査官に、激怒するショーン(ジョン・トラボルタ)。

「…奴は もう近くに来ている」──

捜査網をくぐり抜けたキャスター(ニコラス・ケイジ)は、妻イヴ(ジョーン・アレン)に電話。

しかし、夫を名乗る知らない男の言葉は信じてもらえない。

次に応答したショーン(ジョン・トラボルタ)が、決着を付けようと思考するまさにその時。

危機に直面するジェイミーが見えると力尽くで救い、いつもと同じように派手な格好を“なじる”。

しかし、“別の一面を持つ”父は、娘に護身用のナイフを渡す──

一方、キャスター(ニコラス・ケイジ)は“この顔”を信頼するディートリッヒ(ニック・カサヴェテス)の元へ。

そして、生還を喜ぶ仲間たちに囲まれると、ハイになり意識が混濁。

ショーンを襲って 顔を剥がす…」そう口走り、自分を見失いそうなキャスター(ニコラス・ケイジ)は狂乱。

そこに、かつて内縁関係にあったサーシャ(ジーナ・ガーション)が現れる。

ディートリッヒ(ニック・カサヴェテス)と共に、ショーンから脅迫まがいの取り調べを受けた彼女。

怒りを露にすると、身勝手なキャスター(ニコラス・ケイジ)を殴り倒す。

見張っていたポラックス(アレッサンドロ・ニヴォラ)は、再会する二人の様子を兄に報告した──

“柄にもなく”謝罪し、近寄る子供に「かわいい子だ」と、微笑みかけるキャスター(ニコラス・ケイジ)。

「あなたの子 5歳よ」

初めて打ち明けたサーシャ(ジーナ・ガーション)は、親として息子アダムを危険から守ってきた。

アダムに死んだ息子マイケルの面影を重ねて、抱きしめたキャスター(ニコラス・ケイジ)

しかし、細やかな幸せは、撃ち込まれた銃弾で一変する──

テロリスト一網打尽を掲げた、ショーン(ジョン・トラボルタ)率いるFBI特殊部隊が突入。

激しい銃撃戦の中でも、キャスター(ニコラス・ケイジ)はFBI仲間に致命傷は負わせない戦いを。

一方、サーシャ(ジーナ・ガーション)とアダムを狙い、引き金を引くショーン(ジョン・トラボルタ)。

命を落としたのは、身を挺して二人を守ったディートリッヒ(ニック・カサヴェテス)だった──

鏡を挟んで、背中合わせのショーン(ジョン・トラボルタ)とキャスター(ニコラス・ケイジ)。

振り向きざまに映る敵(自分)と睨み合い発砲するが、決着は付かない。

しかし、その数分後。深い悲しみを味わったのはショーン(ジョン・トラボルタ)だ。

ガラスを突き破って落ちてきた、弟ポラックス(アレッサンドロ・ニヴォラ)が死亡。

不出来でも可愛い弟の解けた靴ひもを結び、命を奪ったキャスター(ニコラス・ケイジ)への復讐を誓う──

顔を入れ替え、立場も変わったFBI捜査官とテロリスト。

その決着を前に、ショーン(ジョン・トラボルタ)は、癪に障るFBI局長ヴィクターを持病悪化に見せかけて殺害。

自宅に潜入したキャスター(ニコラス・ケイジ)は、鉢合わせた妻イヴ(ジョーン・アレン)を震え上がらせる。

それでも、息子を殺した男に成り果てた経緯を話し、血液検査で二人の入れ替わりが証明できると伝えた。

本物のキャスターはAB型。本物の彼女の夫ショーンはO型。

妻を信じるキャスター(ニコラス・ケイジ)は、息子マイケルの写真を持って出て行く──

その晩、自宅に帰ったショーン(ジョン・トラボルタ)は、FBI局長ヴィクターの訃報を知らせる。

「君は失いたくない…」

身近な人を続けて亡くした夫に手を握りしめられ、動揺するイヴ(ジョーン・アレン)。

眠ったショーン(ジョン・トラボルタ)から密かに採血し、勤務する病院で調べた結果はAB型。

現れたキャスター(ニコラス・ケイジ)に銃を向ける彼女だが、“ショーンらしい仕草”の彼を信じた──

そして翌日、葬儀に参列したショーン(ジョン・トラボルタ)が、少年から渡されたのはマイケルの写真。

喪服姿のFBI捜査官とテロリストは、決着の時を迎える。

キャスター(ニコラス・ケイジ)に銃を向けられても、勝ち誇るショーン(ジョン・トラボルタ)。

二人の間にはイヴ(ジョーン・アレン)。更に娘ジェイミーも人質だ。

すると、サーシャ(ジーナ・ガーション)まで現れ、兄を殺したショーン(ジョン・トラボルタ)に銃を向けた。

一触即発の状況で夫を信じるイヴ(ジョーン・アレン)が動き、銃撃戦が勃発。

銃声が止んで静まり返ると、最後まで息子を想ったサーシャ(ジーナ・ガーション)が息絶える──

混乱するジェイミーは、キャスター(ニコラス・ケイジ)に発砲。

その滑稽さに熱狂し、ジェイミーに銃を突きけるショーン(ジョン・トラボルタ)。

狂暴なこの男を父とは思えない娘は、その足に護身用のナイフを突き刺して解放された──

ジェットボートで逃走を図るショーン(ジョン・トラボルタ)を、キャスター(ニコラス・ケイジ)が追撃。

その壮絶な死闘を制したキャスター(ニコラス・ケイジ)が、結婚指輪を奪い返す。

駆け付けた捜査官は、満身創痍の彼に向かって「ショーン・アーチャー」と、呼び掛けた──

移植手術から目覚めて、自分を取り戻したショーン(ジョン・トラボルタ)が自宅に帰る。

イヴ(ジョーン・アレン)は喜び、待っていた娘ジェイミーも「ごめんね」と、父を抱きしめた。

サーシャ(ジーナ・ガーション)との約束を守るショーン(ジョン・トラボルタ)は、アダムを二人に紹介。

悲しみを乗り越えた彼らは、新しい家族を迎えて笑い合う──