コメディ

映画『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』|浮気夫に死の制裁を…衝撃の実話をブラックユーモアたっぷりドタバタ喜劇にしてお届けします!


原題『I Love You to Death』1990年製作

──イタリア人のジョーイは、妻子持ちのくせに“浮気”がライフワークの中年オヤジ。例え妻ロザリーにバレたとしても、愛され続ける自信があった。だけど、ジョーイは気づいていない。浮気相手とのキス現場をロザリーに目撃された事を。しかも、自分の殺害計画が“現在進行中”だなんて…。

ゆきお
ゆきお

フィクション映画の題材として“浮気夫に殺意を抱き、殺害を実行する妻”はありそうだが、本作は1984年にアメリカで実際に起きた殺人未遂事件を基に描いている。こんな事が我が身に降りかかるなら、ガチッと硬直してしまう。しかし、エグみを感じるほど個性的なキャラクターだらけの『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』は、全く力む必要はない。

浮気夫ジョーイを演じた名優ケヴィン・クラインをはじめとする人気俳優が集結した本作は、若き日のキアヌ・リーブスリヴァー・フェニックスの初共演作としても有名。   マーロン役のキアヌは“ジョーイ殺害計画”に加担する事になるが、見るからに頼りない。のちに凄腕の殺し屋になるなんて、誰が思う!?そのギャップも楽しめる作品だ。

キャスト

ジョーイ・ボカ/ケヴィン・クライン                                         出演作:『遠い夜明け』『デーヴ』『卒業の朝』『ラストベガス』他

ロザリー・ボカ/トレイシー・ウルマン                                        出演作:『プレンティ』『ブロードウェイと銃弾』『おいしい生活』他

ディーボ/リヴァー・フェニックス                                         出演作:『スタンド・バイ・ミー』『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』『恋のドッグファイト』他

ハーラン/ウィリアム・ハート                                            出演作:『スモーク』『イントゥ・ザ・ワイルド』『ラスト・フル・メジャー 知られざる英雄の真実』他

マーロン/キアヌ・リーブス                                             出演作:『マイ・プライベート・アイダホ』『スウィート・ノベンバー』『ジョン・ウィック』シリーズ 他

ナジャ/ジョーン・プロウライト                                          出演作:『101』『アイ・アム・デビッド』『クレアモントホテル』『スパイダーウィックの謎』他

スタッフ

監督/ローレンス・カスダン                                            『白いドレスの女』『フレンチ・キス』『ドリームキャッチャー』他

脚本/ジョン・コストメイヤー

音楽/ジェームズ・ホーナー

ここから先は、映画『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』結末ネタバレありのストーリーを綴ります。(本編1時間36分)

また、下記の時間表は、あくまでも目安です。

アメリカで暮らす、ジョーイ(ケヴィン・クライン)とロザリー(トレイシー・ウルマン)は夫婦。

イタリア人のジョーイが焼くピザは老若男女に愛されて、夫婦が営むピザ屋は連日 大忙しだ。

オーダーをこなしつつ店内をくまなく見渡すジョーイは、色っぽいミニスカート姿の常連客を褒める。

ジョーイにとって、素敵な女性に声を掛けるのは当然だった。

ピザを運んだり、手が塞がったジョーイをフォローするのは、阿吽の呼吸の妻ロザリー

電話対応を終えたジョーイの首元から受話器を外すと、テイクアウトの準備へ。

再び鳴った電話に威勢よく出たジョーイだったが「君か(Hey baby~)」と、猫なで声に。

真横に立つ従業員ディーボ(リヴァー・フェニックス)は、“真っ黒(浮気)”だと疑っていた──

昼ピークも一段落すると、身だしなみを整えたジョーイが工具箱を持って外出。

行き先はピザ屋から歩いてすぐの場所にあるアパートで、ジョーイがオーナーだ。

自ら水道管の修理をする責任感の強い男を装って、居住中の女性レイシーと情事を重ねている。

日頃から怪しんでいたディーボの予想通り、ジョーイは真っ黒だった。

あれこれ悪い事を想像するディーボとは違い、気持ちが揺らぐことはないロザリー

イタリア人のジョーイが“色目を使う”のは当然だと思い、何より夫を信じている。

そこまで一途なロザリーに「万が一、浮気したら?」と、真剣に聞くディーボ

返ってきた答えは「私、死んじゃうわ …ソレがだめなら ジョーイを殺してやる」──

わんぱく盛りの子供たちを愛する良き父である彼は、妻ロザリーの事だって凄く愛していた。

生涯の伴侶はただ一人、ロザリーなのは本心。

にもかかわらず、素敵な女性を口説かずにはいられない性分だ。

同居するロザリーの母ナジャ(ジョーン・プロウライト)と相性最悪でも、出会う女性は彼に惹かれてしまう。

仕事熱心な夫ジョーイが息抜き出来るなら、外に飲みに行くのも構わないロザリー

ところが、ディーボが言った“浮気”が頭から離れず、今夜はあれこれ理由を付けて引き留める。

結局、それをサラリとかわすジョーイは、その夜も口説いた女性(フィービー・ケイツ)と──

ロザリーを愛していながら、浮気するジョーイ

何を言っても能天気な返事ばかりのダメ店主を、ディーボもつくづく嫌になる。

そして、ジョーイを一途に愛しているロザリーを見ていると切なくもなった──

今より若い頃、強引なジョーイ(ケヴィン・クライン)に口説かれて、一目で恋に落ちたロザリー(トレイシー・ウルマン)。

今では子持ちの自分を好いてくれるディーボ(リヴァー・フェニックス)には「同じ年くらいの若い子の方が…」と、微笑む。

そこに、ディーボと同じ年くらいの女性ブリジット(ヘザー・グラハム)がやって来た。

どうやら、アパートを“ダシ”にジョーイが口説いたようだ。

オーナーの妻としてロザリーがアパートまで案内すると、“修理”を終えたジョーイと鉢合わせる。

取って付けたような理由でブリジットを帰し、ロザリーとピザ屋に戻って行くジョーイ

先ほど“修理”を終えた部屋に帽子を忘れるヘマもしたが、やきもちを焼くロザリーと愛を再確認。

それでも「修理は職人に…」なんて言う、妻のバカバカしい提案は聞き流す──

家族でレストランへ行ったジョーイだが、ここでも義母ナジャ(ジョーン・プロウライト)と喧嘩が始まる。

我が強い夫と母親の間で、気が滅入るロザリー

だけど、二人の喧嘩よりも、もっと最大級のショックを受ける出来事を目撃してしまう。

それは図書館に行った時のこと。本棚を眺めて歩いていると、聞こえたのはジョーイと女性の話し声。

ロザリーに気づかないジョーイは「(奥さんは?)平気だよ」と、女性を抱き寄せ図書館を出て行った。

女性にモテるけど、浮気する夫じゃない…。

そう信じてバカを見たロザリーは涙を流して、薬を飲み干す──

母親ナジャに打ち明けると離婚の話も出るが、反発するロザリー

「他の女性にジョーイを… そんなの絶対に嫌!だったら、殺してやるわ」

ゆきお
ゆきお

ロザリー以上に前のめりなのは、じつはナジャだった。率先して計画を立てて、自称:殺人経験アリっぽい親友の孫を引き込む。そして、彼女自身も凶行に走った結果は…

親友の孫リンカーン大統領のマスクを被ってバットを振るも空振り。ジョーイに逆襲されて逃走。
ナジャ毎朝、一人で出勤するジョーイの車に、エンジンをかけると爆発するよう細工。だが、今日に限って何も知らないロザリーが同乗!?幸い不発に終わる。

騒々しくも真剣な母娘の“ジョーイ殺害計画”は、これからが本番だ。

子供たちが外泊する、週末がやって来た。

ロザリーナジャが手作りする、辛口トマトソースの隠し味は睡眠薬2瓶分。

その後、自分好みのスパゲティに“おかわり”を繰り返したジョーイに、効果が現れて弱り始める。

だけど、最期の雰囲気ではなく「クソしたら治った」と、上機嫌だ。

連日、仕事と浮気でフル稼働のジョーイの体力と精力は底なし。

再びスパゲティを“おかわり”する夫より先に、ロザリーの方が寝落ちしてしまう──

ソファーで眠るロザリーの隣で、食べかけのスパゲティを持ったジョーイが遂に寝た。

その拍子に目が覚めたロザリーは、銃を構える母親ナジャに気づいて取り上げる。

「私たちが撃つなんて…」と、怖がるロザリーを見て、考え直したナジャ

そして、ロザリーに片想いしている、ピザ屋のディーボを呼び出す──

大好きなロザリー(トレイシー・ウルマン)のために、殺人を引き受けたディーボ(リヴァー・フェニックス)。

寝ているジョーイ(ケヴィン・クライン)を寝室に運び、差し出された銃を受け取るその表情は暗い。

ディーボを残して、外に逃げ出すロザリーナジャ(ジョーン・プロウライト)。

今か今かと緊張していると銃声が聞こえ、寝室に駆け上がる──

人を撃った経験などないディーボは、怖くてその瞬間は目を閉じたから命中したかは不明。

ベッドに横たわるジョーイの顔を覗き込むと、トマトソースのせいで赤い顔をしているだけ。

大好きな女性に責められて、半泣きのディーボを慰めるナジャ

すると、シーツに付いた血を見つけたロザリーは、ジョーイの頭に弾痕を見つける。

ジョーイ…」と、繰り返し名前を呼んで死亡確認すると「ロザリー 何だ」と、返事!?

あれこれ言い訳して、どうにか病気だと信じ込ませたロザリー

睡眠薬入りスパゲティと銃弾のせいで体調は悪そうでも、ジョーイは死んでなかった──

すっかり怖気づくディーボだが、“ジョーイ殺害計画”から降りずに次の手段を考える。

思い付いたのは、ヤバい事でも金を払えば引き受けそうな知り合いだ。

金に糸目はつけないロザリー。対してナジャは「出来るだけ値切ってね」と、ディーボを送り出す。

ハーラン(ウィリアム・ハート)。そして、彼の従弟マーロン(キアヌ・リーブス)。

虚ろな目をした二人は麻薬常習者。たった300ドルで殺人を依頼する、ディーボに向かって声を荒げる。

「人をバラすんだぜ 金はもらわなきゃ」と、一歩も引かない二人に譲歩するディーボ

500ドルで、交渉は成立した──

ジョーイ宅に戻ったディーボは、遅れてやって来たハーランマーロンに唖然。

これから殺人を犯すのにタクシーに乗って、変装もしていない。

締まりのない顔、しかも麻薬常習者!?それを知ったロザリーは困惑するが、ナジャは打ち解けた──

使用する銃を受け取り「22口径か 小さくてパワーがねぇ」と、誰よりも知った風のハーラン

銃声をかき消す音楽を流すよう指示されたナジャは、お気に入りのレコード探しを始める。

ベッドで寝ているジョーイを見て「殺しは経験ねぇ」と、怖がり出すマーロン

すると「俺も初めてだけどよ…」と、瞳孔が開くハーランは、気持ちを奮い立たせる──

その後も、銃声をかき消す音楽が聴こえてこず、待機するハーランマーロン

レジー・ジャクソンのサイン入りバットを握って興奮したり、ジョーイの隣で読書して待つ。

だけど、遂に決心したハーランジョーイを撃ち抜き、銃声はリビングに居るロザリーたちにも聞こえた。

殺害計画をやり遂げてホッとした男三人とナジャは乾杯するが、ロザリーは大泣きして懺悔。

「神様!どうかジョーイを戻してください… 」

すると、確かに胸を撃たれて背中も血で染まっているジョーイが現れた。

ありえない恐怖に戦慄するロザリーディーボ

ナジャに睨まれるハーランマーロンは、減額された報酬200ドルを受け取り退散。

そして、この“ジョーイ殺害計画”をやり遂げたと話を盛って、仲間に自慢するのだった──

ジョーイ(ケヴィン・クライン)を殺害した! その成功報酬で5000ドル稼いだ‼」

ハーラン(ウィリアム・ハート)とマーロン(キアヌ・リーブス)の話は、スグに警察に届く。

タレコミの真相を確かめる、ラリー刑事(ジェームズ・ギャモン)とカルロス刑事(ジャック・ケーラー)。

突然の訪問に焦るロザリー(トレイシー・ウルマン)だが、追い返すことは出来なかった。

彼女の言う通り、ベッドで横になっているジョーイは元気がなく病気っぽい。

だけど、何かが引っ掛かるラリー刑事は、ジョーイにへばりつくロザリーをどかす。

「何てこった 頭に弾が…」

ありえない状況にもかかわらず、平然を装うナジャ(ジョーン・プロウライト)。

絆創膏を取りに行くフリして、立ち去ろうとするディーボ(リヴァー・フェニックス)。

ロザリーも「マフィアに襲われた」とか「ジョーイが病院に行きたがらない」と、言い出す。

確かに、ジョーイ本人も行く気はないようだが、由々しき事態にラリー刑事は救急車を要請。

頭に残っていた銃弾を取り出す緊急手術が始まり、2発も撃たれたジョーイは奇跡的に生き延びる。

その後、この殺人未遂事件に関与した、ロザリーナジャディーボ

そして、ハーランマーロンが逮捕された──

入院するジョーイのお見舞いにやって来たのは、アパートに居住中の浮気相手レイシーだ。

早速、デレっとするかと思いきや、ジョーイは別れを告げる。

ロザリーに恨みも抱いたが、元はと言えば自分が悪い。

「いい旦那になる もっと家庭を大事にする」と、この数日を機に改心していた。

鉢合わせたジョーイの母親(ミリアム・マーゴリーズ)にも睨まれるレイシーは、散々な気持ちで帰って行く。

二人だけの病室で、馬鹿な息子ジョーイを叱り飛ばす母親。

頭が上がらないジョーイは、ちゃんとロザリーに謝ると約束する──

退院後、警察へ行きラリー刑事にロザリーたちの保釈を申し出るジョーイ

「また、殺されるかもしれんぞ」との忠告も、重々承知。

そうなる理由は自分のせいであり、ロザリーが愛してくれている証拠でもある。

そして、大事な子供たちのためにも、彼女は必要だ──

いよいよ保釈される日。子供たちも、母親に会えるのを楽しみにしていた。

一緒に保釈されたハーランマーロンは、撃った事を謝るとジョーイの気が変わらないうちに退散。

同じく謝るディーボに「お前の忠告を聞くべきだった」と、ジョーイは抱き着く。

そして、厳しい顔をした義母ナジャに対して誠実に謝り「二度としない」と、約束。

可愛い孫たちと再会したナジャは、許してくれた──

ロザリーに花束を渡し、もう一度プロポーズするジョーイ

だけど、夫を殺そうとした自分が許せないロザリーは花束を投げつけて、逃げ出してしまう。

追い掛けるジョーイは、ロザリーが飲ませてくれた睡眠薬が出血を抑えたと強引に肯定。

「君は、俺を殺したいほど愛してくれる 夫じゃなくて男として見てくれる その情熱…」

すると、抱き合っていたはずのロザリーは、ジョーイに平手打ちする。

「私の夫よ! 自信を持ちなさい」と──

ジョーイロザリーの愛の炎が燃え上がり、やっぱり片想い止まりのディーボ

すぐに浮気するのではないかと心配していると、ナジャが「また、撃ち殺す! 冗談よ」と、微笑む──