原題『Lock, Stock and Two Smoking Barrels』1998年製作
──舞台はロンドンの下町。大儲けするはずが借金地獄にハマったエディ、トム、ベーコン、ソープ。どうにか人生挽回のチャンスを掴むが、行く先々で奇妙な出来事に遭遇する。どうやら、泥棒、借金の取り立て屋、大麻栽培者や麻薬ブローカーといった、危険で“可笑しな”奴らが関係しているみたいだ。
見どころは、まさにクセの強い脇役。中心となるエディ、トム、ベーコン、ソープも霞んでしまう!? あまりにも緻密な脚本を書き、長編初監督作にして傑作を魅せつけたイギリスの奇才ガイ・リッチー。同国内を席巻した本作は、年間興行収入1位を獲得。 ベーコンを演じたジェイソン・ステイサムが、俳優の道を歩み出した1作目としても有名だ。 さて、ガイ・リッチー監督の最新作『The Ministry of Ungentlemanly Warfare』(原題)。日本の劇場公開は、果たしていつになるのか⁉
ズル賢い賭場の元締めハリーが、凄腕ギャンブラーのエディをカモって50万ポンドの借金を背負わせた。冷酷なハリーの側近は、野獣のような奴ばかりだ。連帯責任を負う羽目になる、悪友(トム、ベーコン、ソープ)も真っ青。そんな時、お隣さんが企む強盗計画を知ったエディは…。物語の基礎はこんな感じでシンプル。だが、ここに各種ワルの肉付け。彼らの手から手へ、金、銃、麻薬が面白いように転げ回る。そして、巧妙なズレを施す事でエグい喜劇が展開される。
無駄話も楽しい本作。鑑賞する際は、代わるがわる顔を出す各種ワルの立ち位置(顔)を出来るだけ早く覚えよう!ちなみに、強面の借金取り立て屋クリスと息子リトル・クリスが私は好きですね。
ここから先は、映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』結末ネタバレありのストーリーを綴ります。(本編1時間47分)
また、下記の時間表は、あくまでも目安です。
1 映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』0h00m~0h32m
エディ(ニック・モラン)をサクラに、路上で盗品を売りさばくベーコン(ジェイソン・ステイサム)。
どんなに盛況でも警察から逃げなきゃならない、しがない商売を正直やめたい。
だが、彼らの悪友トム(ジェイソン・フレミング)は、盗品売買って仕事にハマっている。
最近では、闇商売人ニック(スティーブン・マーカス)がビジネスパートナーだ。
4人目の悪友ソープ(デクスター・フレッチャー)は、料理人。
仲間内では一番まともっぽいが、結局は儲け話が好きな同類だ。
そんな奴らが、1人あたま2万5千。全部で10万ポンドを準備した。
カード賭博で食っている、エディ史上最も格の高い賭博場に挑戦するためだ。
その実力を知っている仲間は、大儲けを期待。もちろん彼自身、勝ちを確信している──
一方、挑戦を受けた賭場の元締めハリー(パトリック・H・モリアーティ)も、負ける気はない。
“どんな奴かも知らない若造など、恐るるに足らず”といった様子だ。
用心棒バリー(レニー・マクリーン)に、生粋のギャンブラーだと聞かされても平気。
邪魔な存在ならば、いつものように痛めつければいい──
溜まり場は、エディのボロアパート。4人で下らない話ばかりしている。
納戸を開けて耳を澄ますと、隣のボロをアジトにしている泥棒の声が。
「これだけ?」「いい仕事を探してくれば、分け前を増やす」
顔も知らない泥棒の湿っぽい話を聞いたベーコンは、薄い壁から離れる──
ところ変わって、質の高さに定評がある大麻栽培者ウィンストン(スティーヴン・マッキントッシュ)。
上流階級のお坊ちゃんで、商売も安泰。イラつく事は、同居する仲間の危機管理能力の低さだ。
別の場所では、借金の取り立て屋クリス(ヴィニー・ジョーンズ)と息子リトル・クリスが仕事中。
同じ頃、JD’s BAR。
マスターのJD(スティング)は、悪友と話す息子がカード賭博で勝負すると勘付き、気が気じゃない──
町の者に、怖い男だと知られている賭場の元締めハリー。
今一番の関心は、エディをカモる事よりも、競売にかけられる名家の散弾銃2丁だ。
25万ポンドも払うなんて馬鹿らしい。他の奴に買われる前に、とっとと盗んで来い!
って事で、賭場にカメラを仕掛け終えた用心棒バリーが外出。
郵便局専門の泥棒コンビディーン&ゲイリー(ジェイク・エイブラハム/ヴィクター・マクガイア)と落ち合う。
「銃を全部 盗んで来い…。ガタガタ言ってねえで盗みに行け!」
知性も骨董品を見る目もない2人に対して、大いに偉ぶる用心棒バリー。
首謀者を聞かれても「俺のため それだけ知ってりゃいい」と、命令通り何も教えず突っぱねる──
深夜、サモア風パブで、エディの帰りを待つ、トム、ベーコン、ソープ。
同じ頃、ディーン&ゲイリーから吉報が届き、安堵した賭場の用心棒バリーが暗躍。
元締めハリーと勝負するエディのカードを盗み見て、50万ポンドの借金を背負わせた。
1週間で返済しなければ…。凶報を聞かされるサモア風パブの連中は、生きた心地がしない──
2 映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』0h33m~1h07m
数日前、「いい仕事を探してくれば…」と、稼ぎの冴えなかった泥棒ドッグ(フランク・ハーパー)。
一味のトップである彼はこの日、子分と共に麻薬と金を奪取した──
大麻栽培者ウィンストン(スティーヴン・マッキントッシュ)と仲間が優雅に過ごしていると、玄関に馴染みの客が。
この日も、大麻と大金を守るはずの鉄格子は無意味。
買い手のプランク(スティーヴ・スウィーニー)が、軽々と入室する。
数日前は「これだけ?」と嘆いたプランク。羽振りが良いこの日は、1500ポンドでブツを購入。
だが、大麻栽培者にとっての上客、“ロリー(ヴァス・ブラックウッド)”には到底及ばない金額だ──
借金返済の名案が浮かばず絶望した顔のエディ(ニック・モラン)が、ボロアパートに帰宅。
納戸を開けて上着を投げ入れると、薄い壁の向こうから“強盗計画”が聞こえて来た。
大麻で儲けてのうのうと暮らすお坊ちゃんに、泥棒一味の本気を思い知らせてやりたいプランク。
面白そうな儲け話にドッグが乗り、盗み聞きしたエディにも名案が浮かぶ──
“大麻と大金をアジトに持ち帰った泥棒一味を襲う”。
その大胆な計画に乗ったのは、運命共同体のトム(ジェイソン・フレミング)。
同じく、ベーコン(ジェイソン・ステイサム)、ソープ(デクスター・フレッチャー)。
闇商売人ニック(スティーブン・マーカス)も、うま味を感じて足を突っ込む。
彼には、4人の手に負えない大量の大麻売買と、銃を見繕ってもらう事に──
後日、大麻を一番高く買ってくれるであろうロリーに交渉を持ち掛けるニック。
すると話はまとまり、大麻のサンプルを持って再訪する約束を取り付けた。
この町では、異常な奴との噂が絶えないロリーだが、その顔を知らない奴も多い。
数日前、エディを待つサモア風パブで、トム、ベーコン、ソープの背後にいたロリー。
あの時、ロリーの機嫌を損ねずに生き延びたのだから、運は味方してくれてるようだ──
一方、運が尽きそうなのは、泥棒コンビディーン&ゲイリー(ジェイク・エイブラハム/ヴィクター・マクガイア)。
あの晩、盗んだ散弾銃の中から“古いポンコツ2丁”を、勝手に売っていた。
馬鹿な2人を叱り飛ばす、賭場の用心棒バリー(レニー・マクリーン)。
競売価格25万ポンドの散弾銃は、すでに700ポンドでトムが闇商売人ニックから買った──
借金の返済期限3日前。
アジトで強盗の流れを確認する泥棒一味。隣のボロアパートの奴に聞かれているとは気づかない。
実行日が近づき気持ちが高ぶるソープは、危機管理能力が低いエディに目出し帽を渡す。
「隣人なんだろ?少しくらい変装すべきじゃないのか?」
更には「ナイフは良いぞ、音がしない 連中にマジだと思わせる… ナイフはプロの武器だ」
淡々と話す、殺し屋のようなソープ。エディ、トム、ベーコンは、ちょっと引く──
揃いのコートを着たドッグとプランクら泥棒一味が、大麻栽培者たちが暮らすアパートへと出発した。
その格好を見ていた、エディ、トム、ベーコン、ソープの意見は一致。
揃いのコートを着て、ガムテープ、散弾銃2丁、ナイフを持って、泥棒一味の帰りを待つ──
金まみれの部屋にいる大麻栽培者たちは、買い手のプランクを軽々しく入室させそうだった。
だが、仲間内で一番警備にうるさいウィンストンの指示が厳守され、鉄格子は施錠されたまま。
それでも、空気銃しかない優雅な大麻栽培者と、機関銃を持った粗野な泥棒。攻防の結果は明白だ。
予期せぬ反乱も力でねじ伏せた泥棒一味は、大麻と大金(と気絶させた交通監視官)を車に乗せてアジトへ帰る。
そして、室内に隠れていた目出し帽の4人組(エディたち)に拘束され、大麻と大金(と意識朦朧の交通監視官)と車を奪われた──
3 映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』1h08m~1h30m
物語は、いよいよ折り返し。これまで登場した男たちによる“奪い奪われ”が激化するから、現在の心境と関係を簡単にまとめておこう。
麻薬ブローカーのロリー | ニックが持ってきた、このサンプル…。俺が懇意にしているウィンストン製だ。泥棒と手を組んで“俺の物を俺に売りつける”とは。バカは全員殺す。 |
大麻栽培者ウィンストン | 泥棒一味にブツも金も奪われた。俺たちは銃なんて慣れてない。復讐はロリーに任せるよ。 |
泥棒ドッグ | お前ら、あの4人組の強盗を早く捜し出せ!違う町だろうと、隣の住人だろうと見つけたらタダじゃおかない! |
賭場の元締めハリー | 返済期日が明日に迫ったエディら4人は、クリスに任せるとして…。散弾銃2丁を早く取り戻せ、バカ野郎! |
用心棒バリー | おい、ディーン&ゲイリー!死にたくなかったら、売り払った散弾銃2丁を持って来い!聞いて驚けよ、首謀者はあのハリーだぞ! |
郵便局専門の泥棒ディーン&ゲイリー | えっ、ハリー⁉あの怖いって噂の男だ。どうしよう⁉ニック!この前 買ってもらった銃を返してくれ。 |
闇商売人ニック | ディーン&ゲイリーよ、お前らがどうなろうと知らねえ!俺は今、身辺整理で忙しいんだ!あのロリーを怒らせて…4人の溜まり場になってる、ボロアパートもゲロっちまった。 |
借金の取り立て屋クリス | ハリーさんの命令なら仕方ない。JDの息子だろうと、キッチリ取り立ててやる。しかし、バーを譲れば済む話なのに。俺なら、何よりも息子が一番だ… |
エディの父親JD | クリスよ、わざわざ知らせに来てくれたのに悪いな。俺は息子よりバーが大事だ。エディめ!借金なんかしやがって。自分のケツは自分で拭け! |
エディ、トム、ベーコン、ソープ | 全部、上手く行った。もう借金の心配はいらない、飲みに行くぞ!今夜は、酒を浴びるほど飲んで気持ち良く酔っ払おうぜー。 |
それでは、泥棒ドッグ(フランク・ハーパー)が、薄い壁に子分を投げ飛ばす場面から再開します──
隣のボロアパートに頭を突っ込むと、部屋には盗聴マイク。大麻に大金。散弾銃2丁もあった。
ボロアパートの2階で、奪われた金を数えるドッグ。1階には子分が隠れて、4人組の帰宅を待つ。
すると、入って来たのは、麻薬ブローカーのロリー(ヴァス・ブラックウッド)と手下たち。
そして、事態を見守る、大麻栽培者ウィンストン(スティーヴン・マッキントッシュ)。
派手な銃撃戦が始まり、ほぼ死亡。大金と散弾銃2丁を持って逃げ出すドッグにも、天罰が下る。
仕事しに来た、取り立て屋クリス(ヴィニー・ジョーンズ)との遭遇だ。
その一部始終を目撃した、泥棒コンビディーン&ゲイリー(ジェイク・エイブラハム/ヴィクター・マクガイア)。
圧勝する強面の男(クリス)を怖がる2人だが、散弾銃2丁を取り戻すために勇気を出してあとを追う──
生き残った大麻栽培者ウィンストンがブツを抱えて去り、静かになったボロアパート。
死体だけ転がるそこに帰宅した、エディ(ニック・モラン)と悪友3人。絶望的状況からの打開は──
どう考えても、悪あがき。それでも“あった物が消えた”って伝えようと電話を掛けたエディ。
すると、賭場の元締めハリー(パトリック・H・モリアーティ)が、予想外の事を言い出す。
「ここに、50万ポンドが届いているぞ」
要望した散弾銃2丁も同時に手に入れたハリーは、奇妙な繋がりを面白がる。
そして、運の良いエディから経緯を聞こうと「私のところに今すぐ来い」と、告げた。
だが、先にやって来たのは、運に見放されたディーン&ゲイリーだ──
怖い男ハリーに殺されたくない一心で立ち向かうが、散弾銃を持つ男(ハリー)に負けてディーン死亡。
相棒を殺されて逆上したゲイリーが、怒涛の勢いでハリーを射殺した。
すると、背後から賭場の用心棒バリー(レニー・マクリーン)に逆襲される。
「ここで、何してる?」「ここに、何しに来た?」
男たちは、最後まで意思疎通が出来ぬまま全員死んだ──
入れ違いで厄介事には巻き込まれなかった、取り立て屋クリス。
だが、最愛の息子リトル・クリスが待つ車へ戻ると、諦めの悪い泥棒ドッグがいた。
息子の命を守るために要求を聞くクリスは、元締めハリーの店へと車を走らせる──
4 映画『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』1h31m~1h47m
エディ(ニック・モラン)ら4人が乗った車が、元締めハリー(パトリック・H・モリアーティ)の店の前に到着。
中に入ったエディとトム(ジェイソン・フレミング)は、ハリーが死んでいて唖然とする。
ウンザリしながら大金を車に積み、ベーコン(ジェイソン・ステイサム)とソープ(デクスター・フレッチャー)に説明した。
怖い男がこの世からいなくなり、少しだけ安心したエディ。
「俺たちは、悪い事はしてない」って、厚かましい事を言っていると、追突された3人が気絶する──
猛スピードで追突したのは、理性を欠いた取り立て屋クリス(ヴィニー・ジョーンズ)だった。
泥棒ドッグ(フランク・ハーパー)を殺害。エディから大金を奪った彼が、冷静になったのはその直後。
元締めハリーの死体と散弾銃を持っている男(トム)に遭遇すると、空気を察して立ち去る。
同様に、700ポンドもかけて購入した散弾銃2丁を取り戻せたトムが、3人を置いて消えた──
警察で取り調べを受けるエディ、ベーコン、ソープは、ある目撃者の証言で容疑者候補から外れる。
あの日、大麻栽培者のアパート前に路駐してた男(泥棒ドッグの仲間)から、暴行された交通監視官だ。
運良く釈放されて、JD’s BARで酒を飲むエディ、ベーコン、ソープ。
すると、あの事件と繋がってしまう散弾銃を「じつは捨ててないんだ」と、トムが告白した。
先の人生よりも700ポンドを選ぶトムに「銃を橋から捨ててこい!」と、凄むエディら3人。
根負けしたトムがJD’s BARを出てすべて解決したかに思えた時、元取り立て屋クリスが現れる。
息子リトル・クリスと金貸し屋として再出発する彼から、楽しませてくれたエディらに贈り物が──
袋を開けると、中身は銃のカタログ集だった。
エディ、ベーコン、ソープも良く知っている散弾銃のページを開くと、価値は…25~30万ポンド!?
同じ頃、トムは川に捨てたと見せかけて、欄干の外側に落とした散弾銃を拾い上げようとしていた。
ポケットから落ちそうな、携帯電話は口の中。
欄干から身を乗り出す自分も落ちないようにしながら、もう少しで届く散弾銃2丁に手を伸ばす。
その両手がやっと塞がると、“捨てないでくれ!”って言わんばかりに3人からの着信音が──