ヒューマンドラマ

優しくも痛みを伴う不朽の名作『スタンド・バイ・ミー』──12歳の夏、抗えない存在がのしかかる僕の心を救ってくれたのは親友だった


原題『Stand by Me』1986年製作

──1959年、オレゴン州キャッスルロック。12歳の少年ゴーディクリステディバーンが、人口1300人に満たない寂寞としたこの町を抜け出す目的は、行方不明になった少年の“死体探し”。見つければ、きっと英雄になれる。歌ったり喧嘩しながら、果てしなく続く線路を歩く…。描かれるのは、たった2日間の旅。だが、自分ではどうにもできない現実と向き合い、成長する彼らの姿は、年齢を重ねるほど心に刺さり永遠になる。

キャスト

ゴーディ・ラチャンス/ウィル・ウィートン                                           出演作:『トイ・ソルジャー』『フラバー』他

クリス・チェンバーズ/リヴァー・フェニックス                                          出演作:『旅立ちの時』『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』『愛と呼ばれるもの』他

テディ・ドチャンプ/コリー・フェルドマン                                           出演作:『グーニーズ』『ロストボーイ』『マーヴェリック』他

バーン・テシオ/ジェリー・オコンネル                                           出演作:『スクリーム2』『ミッション・トゥ・マーズ』『サタニックパニック』他

スタッフ

監督/ロブ・ライナー                                              『ミザリー』『最高の人生の見つけ方』『記者たち-衝撃と畏怖の真実-』他

脚色/レイノルド・ギデオン ブルース・A・エバンス

音楽/ジャック・ニッチェ

ゆきお
ゆきお

ひたすらに森を歩いて進む、少年たちの“死体探し”の物語。その道中は12歳らしい無邪気さが窺える。だが、観る者を惹き付けるのは、小さな胸に抱えた悲しみ苦しみを辛抱している表情。先が見えない将来に悲観する友達を支える姿だろう。

1979年の映画デビュー以降、着実にキャリアを積んでいたコリー・フェルドマン

ウィル・ウィートンジェリー・オコンネル。そして、リヴァー・フェニックス

彼らは演技者だ。しかし、あまりに自然な仕草はゴーディクリステディバーンが、確かにそこで生きていると感じられる。

何度観ても没入してしまう私。いま一番切なさを感じる場面は、4人だけの小さな世界で彼らが無防備に笑い合う姿だ。

ここから先は、映画『スタンド・バイ・ミー』結末ネタバレありのストーリーを綴ります。(本編1時間29分)

また、下記の時間表は、あくまでも目安です。

1985年9月4日。新聞には【弁護士クリス・チェンバーズ 刺殺される】

言葉にならないゴーディ(リチャード・ドレイファス)の傍らを、少年2人が通り過ぎて行く。

眺めるゴーディの胸に、かつて少年だった自分(ウィル・ウィートン)と“彼ら”の記憶が呼び起こされる。

──それは、初めて死体を見た1959年。12歳の夏の出来事だ。

その日もツリーハウスで、テディ(コリー・フェルドマン)、クリス(リヴァー・フェニックス)と遊んでいた。

メガネをかけたテディは、僕らから見ても無茶をする男。

耳には父親に負わされた火傷の痕。熱いコンロに押しつけられた。

ガキ大将のクリスは、僕の親友。

家庭環境が良いとは言えず、彼自身も将来は悪い道に進むと思い込んでいた。

ツリーハウスのドアを叩くのは、バーン(ジェリー・オコンネル)。

僕たちに凄い話を聞かせたくて、のろまなくせに息を切らすほど走った。

4人だけの合言葉を忘れたが、彼なら仕方ないとドアを開けてやる。

しばらくは、バーンのどうでも良い話を聞き流していた僕たち。

だけど「死体を見たくないか」の一言で、全員がバーンに注目した。

前置きは、もう9か月も探し続けている大事なヘソクリ。

家の床下に埋めて自分だけが分かる地図も書いたのに、掃除する母親にソレを捨てられたらしい。

本題はここから。

ヘソクリ探しをするバーンに聞こえたのは、兄ビリー(ケイシー・シーマツコ)たちの会話だ。

ブルーベリー摘みに出て3日も帰らない、同じ町に住む少年レイ・ブラワーの事はニュースにもなっていた。

だけど、汽車にはねられて死んだ。その事実を知るのは、ビリーチャーリー(ゲイリー・ライリー)だけ。

2人は普段から悪さばかりしている不良で、盗難車を走らせていたら偶然 死体を見つけた。

面倒事は御免だから、リーダーの“エース”にさえ秘密。

まさか足の下で、弟バーンが聞いているなんて思わない。

ブラワーの死体があるハーロウ・ロードは、この町から30km先。

そこにあるロイヤル川まで、テディは父親の車で行ったことがあった。

僕には同じ年のブラワーがその距離を歩いた事が凄く思えたけど、クリスは線路を歩けば可能だと言う。

きっと線路を歩いた。だから、汽車に…

いろいろ想像していると、クリスが皆に言った。「ブラワーを見つけたら、俺たち新聞に出るよな」

テディは「英雄になれる」って、すぐに熱くなったけど、いざという時に憶病なのが言い出しっぺのバーン

結局、クリステディに負けて、死体探しの旅が決まる。

2人のようにワクワクもした。だけど、バーンよりも暗い気持ちになったのは、じつは僕の方だ。

僕の家族は、父(マーシャル・ベル)と、母(フランシス・リー・マッケイン)。

優しかった兄デニー(ジョン・キューザック)は、4月に交通事故で死んだ。

快活でアメフト選手として有望だったデニーに父母は愛情を注ぎ、町の皆も将来を期待していた。

僕を「ゴーディ」と呼ぶこともない父親は、クリステディを嫌っている。

異常行動ばかり起こす父親を持つテディ。そして、クリスは学校で給食費を盗んだと噂されたからだ。

デニーの友達は良かった」

そう言って冷たい目を向ける父親は、(嘘をついて)キャンプに行く僕に興味を持つ事はない。

クリスは不良染みたこともするけど、僕にとって誰よりも真剣に言い合える存在。

彼が父親からくすねた拳銃を貸してくれたのは、テディバーンのところへ行く途中のこと。

弾は抜いたと言われ引き金を引くと、狙ったゴミ箱に弾が撃ち込まれてしまい僕は本気で怒った。

すると、笑ったクリスも「ゴーディ!弾が入ってるなんて知らなかった 本当だ」と、真剣な目。

嘘は吐いていないと誓って歩き出した僕たちの前に、エース(キーファー・サザーランド)が現れた。

そして、僕は兄デニーがくれた野球帽を奪われ、クリスもねじ伏せられてしまう。

エースの隣で笑っているのは、弟クリスを助けようともしない兄アイボール(ブラッドリー・グレッグ)。

何で、あんな奴らが…

テディバーンと合流し、僕たちはハーロウ・ロードまで続く線路を歩き出した。

30km程だと思ったけど、50kmはあるかも。だけど「ヒッチハイクしよう」と言うのは、バーンくらいだ。

その内に腹も減ってくると、誰も食べ物を持ってきていない事が分かり、テディバーンが喧嘩になった。

2人をなだめて買い物するためのお金を集めると、僕らの所持金は似たり寄ったり。

ヘソクリが見つからないバーンは7セントだったけど、全部で2ドル37セントに。

空腹の問題が解決すると、テディが迫る汽車の前に立って肝試しを始めた。

「ノルマンディー上陸作戦」そう言って、銃を撃つ真似。僕とバーンは危ないと思っても、何も出来ない。

だけど、クリスが線路にあがり、力尽くでテディを助けて汽車が通り過ぎた。

「死にたいのか」と、真剣に怒られても、英雄になり損ねたテディクリスに背を向ける。

それでも、諦めずに手を差し出すクリス。唇を噛むテディは仲直りの握手をして、僕たちは歩き出した。

同じ頃、退屈しのぎに郵便箱打ちで遊ぶエースは、後部座席でビクつくビリーチャーリーが気に食わない。

すると、これ以上エースを怒らせぬよう、バットで郵便箱を打つビリー。死体は、隠し通す事に決めた。

2 映画『スタンド・バイ・ミー』0h20m~0h36m

僕たちは井戸があるクズ鉄置き場に着いた。本来なら、立ち入り禁止の場所だ。

管理人のマイロ・プレスマンと飼い犬チョッパーが、とっても怖いことを僕たちは知っている。

だけど、今は留守。「空艇部隊 柵を越えろ」と、テディの号令に続いてバーンも柵を越えた。

戦場を駆け抜けるようなテディを見て「20歳まで生きないよ」と、クリス

テディが木から落ちた時に助けた事もあったけど、夢では失敗する悪夢しか見ないとも言う。

僕は、クリスに出来ない事はないと思っている。

今日だってテディを助けたし、井戸までの競争も結局は僕が負けた。

時間は午後1時15分。マイロと犬のチョッパーが来るのは3時頃。そろそろ食べ物を買いに行こう。

誰が行くかをコインで決めると全員が裏で「大変だ!大凶だ」などと、バーンが不吉な事を言い出す。

だけど、誰も信じずもう一度コインを。そして、僕が買い出しに行く事になった。

食べ物を選ぶ僕に、声を掛ける店主。死んだ兄を知っていて、僕の心にデニーとの思い出が蘇る。

家族4人の食卓でも、デニーばかり気に掛ける父親。ガールフレンドの話をする、母親にも厳しかった。

ゴーディの書いた物語を読んだかい?面白いよ」と、デニーが話題を変えてくれたけど、父親は無関心。

それでも、僕の目を見てデニーは言ってくれた。「あの物語 本当に面白かったぞ」

デニーと違って、アメフトをやらない僕。店主に「では何を?」って聞かれても「さあ」としか言えない。

買った物をリュックに詰めて3人のところに戻ると、柵をのぼって向こう側に出ようとしているのが見えた。

その時、「逃げるな! “チョッパー行け”」と、声を荒げたクズ鉄置き場の管理人マイロ・プレスマン

マズいことになった僕には「“チョッパー タマを咬め”」と、聞こえたから必死で走った。

柵を越えて助かった僕たちが初めて見たチョッパーは、噂とは違って笑っちゃうほど怖くない。

すると、チョッパーを馬鹿にされたマイロが、精神を病むテディの父親を吊るし上げる。

クリスバーンは、父親を馬鹿にされて柵に掴み掛かるテディを必死に押さえ、僕は口撃。

「あの親にして、このガキあり」などと言うマイロは、立ち去る僕たちをいつまでも罵った。

「俺の父さんはノルマンディーで戦ったんだ! 英雄だぞ」

たとえ虐待されても、父親の事を分かっているテディは尊敬し愛している。

クリスバーンテディを懸命になぐさめるけど、父親などどうでも良い僕はあまり声を掛けなかった。

少年レイ・ブラワーは依然 行方不明だと言うラジオDJの声に、真実を知るチャーリーが賭けを口走る。

戯れ言ばかりの不良たちを黙らせたのは、金を持っている奴は殺すというエースの一言だ。

森の中に伸びる線路。いつもの調子に戻ったテディバーンは、ヒーローの話をして歩く。

その後ろでは、中学でもクリスと友達でいたいと真剣な僕に、“自分を落とすな”って彼はもっと真剣だった。

同い年のくせして父親のように僕を心配するクリスは、僕に“作家”の夢を諦めるなと言う。

自分の事で精一杯の僕は、置かれた現実を受け入れて夢を見る事さえ諦めた彼に何も言ってあげられない。

3 映画『スタンド・バイ・ミー』0h37m~1h10m

森を抜けると川に架かる鉄道橋。そこを歩けば10分で向こう側に渡れるけど、水面までは高さ30mもある。

いつ来るかも分からない汽車。川に飛び込む事も恐れないテディが先頭を行き、次いでクリス

僕の前をノロノロと四つん這いで進むバーンは、胸ポケットからクシが抜け落ちて残念がった。

汽車が来ないか、もう一度レールを触ると震動!? 木の陰から、黒い煙を上げた汽車が近づく。

僕の叫び声を聞いたテディクリスが懸命に走り、鉄道橋を渡り切った。

大きくなる汽笛とテディクリスの声。僕はバーンと地面に体を投げ出し、九死に一生を得る。

この怖い体験も焚き火を囲む僕たちの笑い話になり、暗くなった森に至福の時間が流れた。

ツトム
ツトム

クリスに「面白い話をして」と言われてゴーディが始めた“お話”はコチラです。

寝静まった僕たちに聞こえたのは、コヨーテの遠吠え。

怖がるバーンを面白がったテディも引き下がるほどの数となり、順番に見張り役をすることにした。

伍長になりきるテディは、僕らの睡眠を邪魔。憶病なバーンも、見張りをやり切る。

眠っていた僕が悪夢から飛び起きると、そばにいたのは見張りをしていたクリスだ。

デニーを失った寂しさを素直に言えた僕は、中学でも友達でいたいともう一度伝えた。

すると、給食費を盗んだことは事実だと告白したクリスが、先生に裏切られた悔しさを口にする。

反省したクリスから給食費を受け取った先生は、それを誰にも言わずにスカートを買った。

実際に、クリスの謝罪や給食費の行方はうやむやになり、先生の新しいスカートは僕も気づいている。

評判の悪い親兄弟と同じ目で見られてしまうクリスの苦悩を、大人たちは知ろうともしない。

「誰も僕を 知らない土地に行きたい」

ガキ大将で大人のクリスは、そう本音を言って僕の前で泣きじゃくった。

早朝、鹿に会ったことは僕だけの秘密。

乏しい朝食にバーンは文句を言うけど、妙に“死体探し”に掻き立てられる僕は軽くあしらった。

このまま線路を進むよりも、横にそれて森の中を突っ切れば1時間。

木々の向こうにロイヤル川が見えた僕たちに、遠回りするなど考えられない。

何があるかも分からない森に、全速力で駆け出す3人。躊躇したバーンも、急いで追い掛けた。

同じ頃、遂にエースアイボールが、“少年レイ・ブラワーの死体”のことを知ってしまう。

退屈しのぎになるなら、何でも良い2人。他の不良仲間も、有名になれると面白がる。

関わり合いたくないビリーチャーリーも、エースに逆らえず車に乗った。

一方、僕たちは行く手を阻む沼を浅いと判断。すると、3歩も進めば深くなり、全身ずぶ濡れになる。

テディバーンクリスまで早く上がろうとする僕を押さえつけて笑うけど、それが悲鳴に変わった。

大慌てで服を脱いだ僕たちは、体中についたヒルを全部引き剥がす。

だけど、まだ僕のパンツの中に残って…

息を飲むクリステディバーン。ヒルを剥がして、血まみれになった手を見た僕は気絶する。

このことでクリスバーンは家に帰ろうとしたけど、真っ先に歩き出したのは帰るつもりはない僕だ。

そして、遂に辿り着いたハーロウ・ロード。

手分けして線路の両脇を探すと、最初にブラワーの死体を発見したのはバーンだった。

4 映画『スタンド・バイ・ミー』1h11m~1h29m

死んで動かないブラワーを前に、黙り込んだ僕たち。

リーダーシップをとるクリスの言葉で、テディバーンは担架を作るために枝を集め出す。

僕は、どうして僕以外の人が、兄デニーが死んでしまったのか分からなくて座り込んだ。

だって、役立たずで嫌いな僕が死ねばいいと父親は思っているのに…

泣きじゃくる僕の涙は、慰めてくれたクリスのお陰で止まった。

だけど、そこにエースクリスの兄アイボールたちが現れ、死体を横取りする気だ。

盗み聞きを怒られたバーンが縮こまり、テディは負けじと挑発。

すると、イラつくエースがナイフを出した。

最後まで逃げないクリスに襲い掛かった時、僕は拳銃を発砲して威嚇。それでも、エースは僕を見くびる。

だから、アイボールたちは生かし、エースだけ撃つと脅してやった。

こうして、負け惜しみを言ってエースが去り、英雄になれるのは僕たちの方。

だけど、違うように思えてしまい、ブラワーに毛布を掛けて黙ったまま帰路に就く。

その後、僕たちは匿名で通報。彼の事は大人に任せた…

あの旅から町に戻ったのは、日曜日の早朝5時。

解散する時に、しんみりしたのは夜通し歩いて疲れたからだけではない。

中学に進んだら、友達じゃなくなるかもしれない… 皆がそう思っていたからだ。

先に家に向かって歩き出したバーン。道に落ちている、1ペニーを拾って笑った。

旅で無茶ばかりしたテディに「怒ってないか?」と聞かれ「気にするな」と、答えたクリス

結局、僕はテディバーンとは疎遠になって、町に流れる噂で彼らのその後を聞くことになる。

中学に進んでからも、クリスは僕の友達だった。家庭環境に負けず努力して大学に進学、弁護士に──

そして、偶然入ったレストランで喧嘩する者の仲裁に入り、刺殺された。

町を出たクリスとはもう10年以上会っておらず、訃報を新聞記事で知ったゴーディ

クリスが信じてくれた作家になり、あの旅で彼が言った通り“僕たちの話”を執筆中。

すると、出掛けるはずが執筆に夢中の父親に息子2人が呆れ、我に返るゴーディは微笑む。

あの12歳の時のような友達は もう出来ない。  もう二度と・・・

そう結んで、ゴーディは息子たちの元へ。

父親を待っていた彼らと、笑い合って出掛けた。