原題『The Eye』2008年製作
──角膜移植手術を受けたシドニーは、15年ぶりに視覚を取り戻す。だが、自分自身や周りが見える喜びは、死者まで見える恐怖に変わった。誰にも理解してもらえず、苦悩するシドニーが辿り着く悲しい真実。すべて解決したかに思えたその時、迫る危機にシドニーは…
出典:Lionsgate Movies official YouTube channel『The Eye』Trailer
香港・タイ・シンガポール合作『The EYE 』(2002年)のリメイク。あくまでも私見だが、じめっと感は本家アジアン・ホラーが上で、本作は恐怖度★とさせて頂く。ストーリーはほぼ同じ。単に恐怖一辺倒ではなく、悲哀や慈愛も描かれる。好演が光るジェシカ・アルバと、本作から2年後の公開『キック・アス』でブレイクする、クロエ・グレース・モレッツの共演も見応えあり。
出演者
シドニー・ウェルズ/ジェシカ・アルバ :『アウェイク』『メカニック:ワールドミッション』他
ポール・フォークナー/アレッサンドロ・ニヴォラ :『フェイス/オフ』『アムステルダム』他
スタッフ
[監督]ダヴィド・モロー/ザビエ・パリュ :『THEM ゼム』他
[脚本]セバスチャン・グティエレス :『ゴシカ』『スネーク・フライト』他
[音楽]マルコ・ベルトラミ :『スクリーム』シリーズ『人生の特等席』他
ここから先は、映画『アイズ』結末ネタバレありのストーリーを綴ります。(本編1時間37分)
また、下記の時間表は、あくまでも目安です。
1 映画『アイズ』0h00m~0h23m
5歳で失明したシドニー(ジェシカ・アルバ)だが、残された四感は研ぎ澄まされている。
素直な彼女は人々に好かれ、ヴァイオリン奏者として活躍中だ──
外は激しい雨。
マンションコンシェルジュのミゲルは、帰宅したシドニーに優しく声を掛ける。
どうやら、明日の手術に緊張しているようだ──
角膜移植手術後。
両目にガーゼをあてるシドニーは、非日常の病室で耳を澄ませる。
同室の患者の気配を感じた時、近づく者が。「誰?」「しーっ!看護師さんに見つかる」
可愛い声の正体は9歳のアリシア(クロエ・グレース・モレッツ)。
「ゴルフボールくらいの塊が頭の中にあるの」
ハツラツと話すアリシアは、大きな手術を控えていた──
この日、シドニーの両目を覆うガーゼが外される。
主治医と看護師、姉ヘレン(パーカー・ポージー)の形がぼんやりと見えたシドニー。
4人目のことは気にも留めなかった──
深夜、気配を感じたシドニーが目を覚ます。
ぼんやりと見える人影のあとに続き、廊下に出て行く同室の患者ヒルマン。
翌朝、ヒルマンの死が伝えられる──
術後、経過に問題はないシドニーだがドナーの情報公開を望む。
しかし、非公開が原則。
主治医は精神的不安を取り除くセラピーを受けるよう勧めた──
退院するシドニーは小さな友達アリシアとの写真を撮ってもらう。
「大丈夫、この世界は本当に美しいわ」
シドニーから不安を感じ取ったアリシアはそっと勇気づける──
マンションに帰ったシドニーを大勢の友人が出迎えた。
声や手触りで知っていた彼らの顔を初めて見るシドニーは押し寄せる視覚情報に混乱。
深夜、火に襲われた悪夢から目覚めると部屋に異様な何かが見えた気が──
2 映画『アイズ』0h24m~0h56m
専門医ポール(アレッサンドロ・ニヴォラ)のセラピーを受けて悪夢も忘れかけた頃。
シドニー(ジェシカ・アルバ)は、自分にだけ見える忌まわしいものに再び怯え始めた。
忽然と消える少年、女は憤怒の形相。
深夜、眠りについても見てしまう人影、炎に包まれ叫ぶ少女、憎悪を抱く人々。
だが、幻覚が見える目の検査結果は問題なし。
現実主義のポールは異常を訴えるシドニーの話をまともに取り合わなかった──
これまでと同時刻、深夜1時6分。
繰り返す悪夢はシドニーを火事の渦中へと引き込んだ──
恐怖から目覚めて街を彷徨うシドニーの前に死者と人影。
逃げ込んだレストランが激しい炎に包まれた。
だが、店主も客もみんな消えて静まり返る。
そこは確かに火事が起きた現場だが、今は立ち入り禁止だった──
迫って来る死者に怯えるシドニーは部屋中の照明を割って何も見ようとしない。
音信不通になったシドニーのもとにポールが駆け付ける──
入院するシドニーをアリシア(クロエ・グレース・モレッツ)が訪ねて来た。
だが「腫瘍を取ったの」と、すぐ廊下に出てしまう。
あとを追うシドニーが見たのは人影と消えて行くアリシアだった──
翌朝、逝ってしまったアリシアが書き残した手紙と写真を受け取るシドニー。
「これは誰?」と、自分を指さす。
鏡に映った自分を凝視するシドニーには写真とは違う誰かが見えていた──
3 映画『アイズ』0h57m~1h20m
臓器移植を受けた患者にドナーの記憶が伝わる“細胞記憶”。
医学書を読み漁り原因を調べたシドニー(ジェシカ・アルバ)は、自分が見ていたものはドナーの記憶だと考える。
「望みは何? 助けたいの」
シドニーの問い掛けに、鏡に映るドナーが見せたのはあの火事。
ドナーの情報非公開に頑なだったポール(アレッサンドロ・ニヴォラ)だが、苦しみを終わらせたいシドニーに協力する──
シドニーとポールは、ドナーの母親が暮らすメキシコの小さな町に到着。
悪夢で見た火事があったこの町で、“魔女”という言葉を見聞きする。
家に来た他人のシドニーとポールを煩わしく思う、ドナーの母親(レイチェル・ティコティン)。
顔に火傷の痕が残る母親は娘の事を尋ねるシドニーを見て「アンナの目だわ」と、涙ぐむ──
子供の頃から人の死が分かる不思議な力があったアンナ(フェルナンダ・ロメロ)。
町中の人間が死を予見したアンナを「魔女」と呼び、謂れのない非難を浴びせた──
アンナを思う母親を見つめていたシドニーは、あの人影が見え愕然とする。
直後、母親は心臓麻痺を起こし、ポールが病院へ運ぶ。
家に残ってアンナに呼びかけたシドニーには、惨劇の全貌が見えた──
その日、工場で起きる火事が見えたアンナ。
あの人影が働く者の後ろに見えるアンナは「逃げて!」と、叫んだ。
しかし、アンナを信じる者はおらず追い返される。
工場の奥で働く母親が出て来た時には誰一人としてアンナが来たとは言わない。
そして、火事が発生。
工場にとどまった大勢が死に、町の人間はアンナを「魔女!」と、責めた──
目覚めたシドニーはアンナを追って地下室へ。
「ゆるして」
そう言って自殺を図るアンナを抱き寄せ「あなたは悪くない」と。
信じてくれるシドニーの腕の中で逝くアンナ、そして母親も──
4 映画『アイズ』1h21m~1h37m
夜、全てが終わり帰路に就くシドニー(ジェシカ・アルバ)とポール(アレッサンドロ・ニヴォラ)。
だが、不運な渋滞に巻き込まれ「朝までかかるかも」と、ポールは息を吐く。
何気なく前方を見ていたシドニーは、見覚えがある母娘の車に悪い予感を感じて外へ飛び出す。
辺りには、死者を連れて行くあの人影が見え始めた。
そして、車列にはナンバー“106”のガソリンを積んだタンクローリーが。
「アンナは私に、この人たちを救わせたいの!彼女の望みよ!」
事故が起こると確信したシドニーは、ポールと共に人々に避難を呼び掛けた。
だが、暴走車がタンクローリーに衝突して火事は起こり、車に残された少女の背後には人影が。
間一髪、車から少女を救出したポール。人々は迫る炎から逃げ延びた──そして
爆風で割れたガラスを浴びて、再び視覚を失ったシドニー。
しかし、多くの人の命を救えたことで孤独だったアンナの魂も救った。
ほんのわずかでも、美しい世界を見れたシドニーが奏でるヴァイオリンの音色に喝采が送られる──